第六章
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「阪神でもね」
「活躍したから」
「だからね」
このことは事実だからだというのだ。
「今もね」
「魂は甲子園にあるかも知れないのね」
「そうかもね、戦前阪神で活躍した人達も」
「その魂は甲子園にあるかも知れないのね」
「そうかも知れないわね」
「そう考えたら尚更感慨深いわね」
ビールを飲みつつだ、呉は応えた。小柄だが食欲旺盛で酒もよく飲んでいる。
「甲子園って」
「そうよね」
「いい球場よね」
「戦前からあってね」
「歴史もあって」
「それでね」
「日本一の球場って言われるけれど」
他に多くの球場があるがだ。
「その名に恥じないね」
「歴史もあるわね」
「色々ある球場で」
それでというのだ。
「阪神が負けたりね」
「洒落にならないネタもあるわね」
「けれどね」
それでもというのだ。
「そこにあるものはね」
「深いわね」
「戦争前だからね」
「そう聞いたら」
呉は感慨を込めて言った。
「またね」
「行きたくなるでしょ」
「それで阪神が勝ったらね」
その時はというのだった。
「最高よ」
「そう思うわね」
「ええ」
まさにというのだ。
「その時はね」
「尚更よね」
「阪神が勝ったら」
そうなればというのだ。
「本当にね」
「そのことも願いながら」
「そうしてね」
「野球の勉強もしていきましょう」
二人で笑顔で話した、そしてだった。
酒につまみを楽しんでいく、その中で。
ふとだ、呉は店の中に一七五位の背でがっしりした体格で四角い感じの顔の男性を見て伊月にこんなことを言った。
「あの人まさか」
「どうしたの?」
「ほら、あの人」
伊月にその人を見つつ話した。
「まさかと思うけれど」
「えっ、あの人は」
伊月はその人を見た、そうして驚きの声をあげた。
「十一番の」
「そっくりよね」
「けれどあの人は」
「まさかと思うけれど」
「甲子園から出て」
「そしてね」
そうしてというのだ。
「飲んでるのかしら」
「そういえば」
伊月はその人と一緒に飲んでいる口髭を生やした人を見て言った。
「あの人も」
「阪神のね」
「キャッチャーでね」
「あの人とバッテリーを組んでいた」
「その人かしら」
「そうよね」
「まさかと思うけれど、ただ」
伊月はそれでもと言った。
「魂はあるからね」
「そうよね」
「人間と幽霊の違いはね」
それはというと。
「身体があるかないか」
「それだけね」
「だから今は甲子園におられて」
「今日は勝ったから」
「喜んでおられるのかしら、そういえば」
伊月は今度はカウンターを見た、そこには一人の老人がいたが。
「あの人は愛媛生まれの」
「古狸さん?」
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