第三章
[8]前話
「食べるわ、それにここに来るまで大丈夫だったの?」
「サモワに来るまでか」
「フィジーまでね、泳いで」
「色々襲われそうになった」
トゥイフィティはすぐに答えた。
「イルカだの鮫だのにな」
「色々な生きものに」
「人が漁をしていてだ」
その途中というのだ。
「網も来た、俺が泳ぎが達者でないとだ」
「危なかったのね」
「俺でないとな」
「これから一月そうした暮らしが出来るかしら」
シナは鰻の姿の彼に問うた。
「貴方は」
「それは嫌だな、幸い全てかわしたが」
襲われそうになってもというのだ。
「あと一月になるとな」
「それじゃあね」
「もうか」
「今ね、変身を解くべきよ」
「そうか」
「私を想って来てくれたなら」
シナは確かな顔になって答えた。
「嬉しいわ、私もその想いにね」
「応えたくなったか」
「さっき言った通りにね。その証として」
それでというのだ。
「今から椰子の実を取って来るから」
「そしてその汁を俺にかけてくれるか」
「待っていてくれるかしら」
「勿論だとも」
明るい返事だった、そうしてだった。
シナは実際に椰子の実を取ってそこれを割った汁をトゥイフィティが変身している鰻の頭にかけた、彼はここで呪文を唱えた、すると。
海から彼は人間の姿になってすくっと立ち上がってだ、そのうえでシナに笑顔で言った。
「では俺達はこれからだ」
「夫婦ね」
「そうなろう」
こう言って彼女を抱き締めた、彼女もそれに応えて抱き返し。
二人は夫婦となった、以後二人はトゥイフィティの魔法とシナの確かな心によって幸せに暮らした。南洋に伝わる古い話である。
椰子の魔法 完
2023・1・12
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