第一章
[2]次話
幼稚園バス
谷本仁義は会社を定年してから今は地元の幼稚園のバスの運転手をしている、朝と昼にいつもだった。
幼稚園児達を送迎していた、眼鏡をかけた皺の多い顔で髪の毛は前からかなりなくなっている。背は一七〇位で痩せているが腹は少し出ている。
いつもその仕事をしているが。
「何でもない感じでな」
「色々あるの」
「ああ、やってみるとな」
長年一緒に暮らしている妻の澄子に話した、妻は髪の毛はすっかり白くなっていて狐顔で細面で小柄である。
「これがな」
「そうなのね」
「やる前はな」
夫は妻に話した。
「別にな」
「何でもないって思ってたのね」
「ああ」
実際にというのだ。
「そうだったけれどな」
「やってみたら」
「子供達のそれぞれの家の事情が見えたりな」
「そういうのわかるのね」
「送迎のお母さんやお父さん見てたらな」
そうしていたらというのだ。
「服装とかお喋りからな」
「わかるのね」
「ああ、それにな」
さらに言うのだった。
「先生達もな」
「幼稚園の」
「何かとあるな。先生達同士の関係とかな」
「何処でもそういうのあるのね」
「それぞれの人生までな」
そういったものもというのだ。
「やっぱりな」
「見えるのね」
「ああ」
妻に夕食の場で話した。
「本当にな」
「そうなのね」
「だからな」
それでというのだ。
「何でもないと思ったら」
「違ったのね」
「サラリーマンと同じでな」
定年までの仕事と、というのだ。
「何かとな」
「あるのね」
「ああ、そしてそうしたことをな」
ご飯を食べつつさらに言った。
「絶対にな」
「言わないことね」
「プライベートのこともな」
「あるから」
「そんなことはな」
「言わないことね」
「首を突っ込むことはな、ただ変な喧嘩やいじめはな」
こうしたことはというと。
「やっぱりな」
「放っておけないわね」
「だからな」
そうであるからだというのだ。
「幸い園長先生はいい人で話もわかるし優秀だからな」
「お話して」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「ことを収めてるよ」
「そうしてるのね」
「ただその子その家庭その先生でな」
「何かとあるのね」
「何もない人なんてな」
それこそというのだ。
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