第二章
[8]前話
幸いあってエリザベートは大喜びで来た、その翌日だった。
「昨日映画村に行ったの」
「そうなのね」
「うん、それでね」
幼稚園のクラスで水樹にこのことを話した。
「十二単もあってね」
「着たのね」
「ええ、それでその時の写真がこれね」
両親が持たせているスマートフォンの画像を見せた、そこには確かに十二単を着ている彼女が笑顔でいた。
「似合う?」
「可愛いわ」
水樹はその彼女を見て笑顔で答えた。
「とてもね」
「そう、有り難う」
「お姫様みたいね」
「日本のお姫様ね」
「そうね、着られてよかったわ」
満面の笑みで言うのだった。
「本当に。ただね」
「ただ?」
「十二単って着るまでに随分時間がかかるのよ」
「服何着もあるの」
「そう、それで物凄く重いの」
「何着もあるから」
「重くて動きにくくて暑いから」
何着も着てというのだ。
「普段はお洋服の方がいいわね」
「私達が今着ている」
「いつも着たくはないわ」
こう言うのだった。
「私はね」
「そうなのね」
「ええ、普段はね」
水樹に自分の洋服を見つつ話した。
「その方がいいわ」
「普段はお洋服ね」
「すぐに着られて」
そしてというのだ。
「軽いし動きやすいし」
「暑くないし」
「お洋服の方がいいわ」
「普段は」
「ずっとね」
こう言って水樹と一緒に遊んだ、洋服を着て遊んだがとても身軽だった。十二単を着ている時とは全く違っていた。
十二単を着てみた 完
2024・5・23
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