第二章
[8]前話
「最低ですね」
「まともに働けてない」
「本当に学歴は関係ないですね」
「それがわからない後藤田君でもないがな」
「それで言わないんですかね」
「まあよかったら聞いてみろ、酒でも飲みながらな」
「お互い飲めますし、それなら」
若宮は自分から言った。
「仕事帰り居酒屋にでもお誘いして」
「聞いてみます」
こう言って実際にその人の仕事が終わるとだ。
若宮は後藤田に頼んで一緒の居酒屋で飲んだ、和風のカウンターの席で飲んでまずは世間話をしてだ。
彼にどうして学歴の話をしないか不愉快でないのなら話してくれますかと聞くと。
「きりがないからだよ」
「きりがないですか」
「上には上がいるね」
「学歴もですか」
「日本で学歴と言うと東大だね」
「やっぱりあそこですね」
「けれど世界を見たら」
そうしたらというのだ。
「東大以上の大学なんて幾らでもあるね」
「ハーバードとかスタンフォードとか」
「オックスフォードなんか」
この大学はというと。
「東大なんてってなるね」
「そうですね」
若宮も頷いた。
「確かに」
「高校だってイートン校あるし」
「イギリスの」
「そうだからね、そして学歴で能力や人格もね」
「決まらないですね」
「東大法学部主席で出て弁護士になったある野党の党首なんて」
後藤田はビールを飲みつつ顔を曇らせた。
「女の人の」
「ああ、あの人ですね」
若宮はそれが誰かすぐにわかった。
「酷いですね」
「あと検事長さんの後輩さんのお話も聞いたし」
「僕も聞きましたけれど」
「学歴では決まらないからね」
能力や人格はというのだ。
「僕は学歴のことは言わないんだ」
「そういうことですね」
「そうだよ、言っても思っても仕方ないからね」
「言われないですか」
「これからもね、それよりもゲームの話はどうかな」
「どんなゲームですか?僕もゲーム好きです」
「野球ゲームでね」
野球と聞いて阪神ファンの若宮は目を輝かせた、すると後藤田は西武ファンとして話をした。そちらの話は飲みながら弾んだのだった。
学歴には限りがない 完
2024・5・17
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