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学歴には限りがない
第一章

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                学歴には限りがない
 旧帝大の法学部を優秀な成績で卒業し在学中に司法試験に合格した後藤田誠はその学歴で有名である、だが。
 自分ではそのことを決して言うことはない、検事それも凄腕のそれとして淡々と仕事をこなすだけであった。
 プライベートでは読書とテレビゲームをする位だ、何かしらの悪口を言うことはないが自分のことを言うことはもっとない。
 黒眼鏡をかけた長方形の顔で黒髪を左に分けている、やや色黒で細い小さな目で薄い唇だ。背は一七〇位で痩せている。
 その彼についてだ、後輩で私立大学出身の検事若宮省吾大きな目で卵型の頭と癖のある茶色がかった髪の毛で長身ですらりとした彼はふと上司に言った。
「後藤田さんって旧帝大ですよね」
「出た大学はな」
「ここの検事皆私立大か公立大卒で」
「旧帝大になるとな」
「あの人だけですね」
「それでも彼はな」
「そのことを全く言わないですね」
 こう言うのだった。
「本当に」
「基本仕事と趣味の話ばかりだな」
「お話すると面白い人で穏やかで」 
「悪い人間じゃない」
「そうですね」
「しかしな」 
 それでもというのだった。
「自分のことは言わないな」
「特に学歴のことは」
「悪口も言わなくてな」
「何ででしょうか」
「聞かれたら答える人間だ」
 上司は若宮に話した。
「嫌でないとな」
「じゃあよかったらと確認して」
「どうして学歴のことを言わないかな」
「後藤田さんに聞けばいいですね」
「ああ、世の中実際聞かれなくてもな」 
 そうであってもというのだ。
「言う人いるな」
「世の中には」
「そうだしな」
「言う人は言いますね」
「自分は東大だの京大だのな」
「それで能力や人格が決まるかっていうと」
 学歴でというのだ。
「もうな」
「言うまでもないですね」
「大阪の外国語大学出た一つ下の高校時代の部活の後輩はな」
「そこ国立ですね」
「いつも呆けた顔でまともに仕事しないで食べた後の味噌汁茶碗に痰吐く様な奴でな」
「うわ、味噌汁茶碗にですか」
 これには若宮も驚いた。
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