第一章
[2]次話
読者モデルだった先輩
常盤向日葵は誰もが驚く美人として社内でも評判だ。背は一六〇位で長い黒髪を後ろで二つに分けて束ねている。大きな黒目がちの目に奇麗な細長い眉に小さなピンクの唇で色白で穏やかな顔立ちで胸が大きい。
兎角美人という、だが性格は謙虚で真面目で穏やかだ、それで美人と言われてもそうですかで終わりだが。
彼女の噂を聞いてだ、後輩の桜宮あかりは言った。
「先輩昔読者モデルだったんですね」
「はい」
向日葵はあっさりとした口調で答えた。
「学生時代は」
「凄いですね」
あかりはそのことを確認して言った。
「それはまた」
「いえ、そうでも」
「いやいや、モデルさんですよ」
あかりはだからだと応えた。
「本当に」
「私よりずっと奇麗な人おられたので」
「それで、ですか」
「私はです」
「読者モデルだったことに」
「過去のことなので」
それ故にというのだ。
「別にです」
「凄いとはですか」
「思っていません」
「そうですか」
「大事なのは」
それはというと。
「あくまで、です」
「今ですか」
「そうかと」
こうあかりに返した。
「昔どうであっても」
「今ですか」
「大事なのは」
「そうなんですね」
「はい、世の中は」
「今も美人さんですが」
「お顔のことも」
向日葵はそちらもと返した。
「やはり大事なのはこれからです」
「お顔もですか」
「そう考えています」
「そうなんですね」
あかりはこう返したが違うのではないかと考えていた、向日葵が読者モデルだったことと今の奇麗さを見れば。
だがある日だ、兎角問題発言ばかり起こしインターネット上で炎上を続けている運動家と変わらない某キャスターの過去の動画をインターネットで観てだった。
あかりは仰天した、そのうえで友人にラインで話した。
「区目裕樹だけど」
「あの問題発言ばかりのキャスターね」
「毎晩不況ばかり言ってね」
「不倫もしてダイオキシンでやらかして」
「嘘も言うね」
「あいつがどうしたの？」
「観てこれ」
友人に彼の過去、まだ若い頃の動画を自分のスマートフォンから送った。
「この動画ね」
「えっ、顔全然違うじゃない」
友人もその動画を確認して驚いた。
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