暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
戦争の陰翳
東京サミット その2
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「レーニン全集を読んですぐに、赤い旗を持ち、ヘルメットをかぶって徒党を組んで歩く。
そんなにわか仕立ての連中は、それほど怖くない。
本当に怖いのは、後から赤い麻疹(はしか)を発病した連中だ……
長い潜伏期間を経て、重要な地位に就いた後、確信犯的に左翼運動に精を出す……
潜伏期間が長ければ、隔離することも出来なければ、急に発病するまでこっちも動けん」

 2時間ほどレクチャーを受けた後、マサキは桜田門を後にした。
美久が運転する遠田の最新式セダンの後部座席に座りながら、ぼんやり外を眺めていた。
 このノッチバックの4ドアサルーンの外見は、前世のホンダ・アコードそのものであった。
排気量1・8リッターのエンジンを搭載し、パワーウインドウとフルオートエアコンが装備されている中型車だ。
その内側は、総革製の座席に始まり、自動車電話に至る内装が施された特注品である。
 
 東京府警本部での話は、結論から言えば有益だった。
マサキが知らない、日本国内の治安情報が手に入ったからだ。 
 アクスマンの偽遺書事件を追う過程で、ソ連の対日スパイとその協力者が浮かび上がってきた。
それは、河崎重工の技術者から五摂家の姻戚という具合である。
 そのスパイと思しき人物の名前が書かれた名簿を見ながら、マサキは誰から殺そうかとばかり考えていた。
 
 気になる人物は、以下の通りだった。
 1人は、大野何某(なにがし)なる貿易商で、与党・立憲政友会の代議士の孫だった。
(立憲政友会は、今日の自民党の元となった中道右派よりの政党である)
 妻は白系ロシア人、あるいはウクライナ人とも。
噂ではGRUの工作員の妹を(めと)ったとされるが、この異界では財界要人とソ連人との婚姻は珍しくなかった。
 1941年の日ソ不可侵条約が、40年近く更新されているためである。
この5年ごとの条約を、ソ連は珍しく維持していた。
恐らく条約を守る代わりに日本政府から有利な条件を引き出しているのだろう。
 大野はソ連貿易ばかりなく、東欧にもいろいろ手を伸ばしていた。
大野の生母はドイツ人だった関係で、東独にも支社を置いていた。
 ココム規制のせいもあろう。
国家人民軍や人民警察とは、さすがに表立っての貿易はしなかった。
 だが、ゴルドコフスキ―の闇貿易には協力関係にあった。
文書や写真も残されており、逮捕する証拠も十分だ。
 なんといっても、それに関するシュタージファイルをマサキが持っているのが大きい。
あとはシュタージ関係者の証言が二、三欲しいところである。
 
 二人目は、穂積(ほずみ)という人物で、機械部品会社の社長だった。
その会社は、戦術機のコックピットに備え付けてある強化外骨格の77式機械化装甲を作っていた。
 機械化装甲と
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