第三部 1979年
戦争の陰翳
東京サミット その1
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び過去に戻していた。
前の世界でも似たようなことがあったな。
日本政府の世界征服計画と称する怪文書が出回り、世界中に流布された田中上奏文事件。
事情に通じた日本人が一目見れば、はっきりとした偽造文書と分かるが、何も知らない人間は信じてしまう作りだった。
あの事件は国家合同政治総本部――当時のKGB機関――の渾身の一作で、最初に出回ったのは日本だった。
日本から世界中に伝達する形で、拡大して報道され、いつの間にか既成事実化された。
今回のアクスマンの遺書という物も、おそらくはソ連の偽文書だ。
最終的には対ソで協力関係にある日中間の離間を目的とし、日本と西ドイツの関係を悪化させる。
それがこの偽造文書の最終目的だ。
下手したらシュタージ自身が知らないところで話が進んでいるのかもしれない。
ユルゲンやヤウクがこのアクスマンという木っ端役人の事を知っているのだろうか。
シュタージとの関係が深いアーベルにでも聞くか……
いや、俺がシュタージファイルを返し読みすればいいだけか……
とりとめのない会話の内に食事が終わると、酒席はお開きになった。
金剛飯店からの去り際に、諜報員は真面目な顔をして言った。
「木原君、アクスマンという男の事を調べてごらんなさい。
色々と面白いことが分かりますよ」
マサキは、つぶれかけたホープの箱からタバコを抜き出す。
口にくわえて火をつけると、興味を覚えた顔つきで尋ねた。
「アイリスディーナの為になるのか」
男は、なぜか楽しそうに答えた。
「アイリスディーナ嬢を幸せにしてやるには、その因果から解放してやるしかありません」
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