第三部 1979年
迷走する西ドイツ
忌まわしき老チェーカー その1
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た。
正に、青天の霹靂とは、この事である。
議長よりも先に、外相が口を出した。
「そのことに関して、私も同様の事を危惧しています。
かつてソ連は、建国当初、日米間のシベリア出兵に苦しめられていました。
そこで、カムチャッカ半島を米国に譲るふりをして、千島列島を近くに持つ日本の権益を脅かすようなそぶりをみせました。
この提案の結果、日米の外交関係は一時的にぎくしゃくし、米軍はシベリアからさっさと引き上げる事態になりました。
今回の領土交換の件は、50年前の日米離間の計略に似ております」
「難しい問題ですな」
先程から何か言いたげにしていたハイム少将は、ようやく割り込んだ。
「内々に、木原博士にでも相談なされては、どうでしょうか。
彼ならば、裏のルートで日本政府や米国政府筋に連絡を取ってくれるでしょう」
「そいつはいい」
外相は、にっこりとうなずいた。
閣僚たちの会話が続いていたが、議長の耳には入らなかった。
ソ連が、さりげなく最後通牒をポーランドと東ドイツに突きつけてきたのだ。
そう思うしかなかった。
解決したかに思えた領土問題を蒸し返して、統一交渉やEC加盟を遅らせて、東ドイツを国際的に孤立させるのだと。
「君も賛成してくれるね」
アーベル・ブレーメからいきなり言葉を振られたので、我に返った議長は、反射的にうなずいた。
だが、アーベルのその言葉は、
『東ドイツに降りかかった災難を、今すぐにでもどうにかしなければならない』
という、男の気持ちに拍車をかけることとなった。
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