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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
閑話3 きれいな戦慄 【第100話記念】
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トウェルを、フォレストは呼び止め、小声で囁いた。

「アンタ、このまま無気力試合を続けるなら、負けにするよ?」
「無気力に見えますか?」
「周りにいる陸戦技術科候補生の顔を見なよ。みんな戦技訓練を見に来たんであって、猿回しを見に来たんじゃないんだ」
「ですがフォレスト四回生殿、あんまり早く試合が終わってしまいますと……」
「あっちが納得しないっていうのかい? だったらエリミネーションマッチにしてあげるから、とっとと始末しな」

 ドンとフォレストに背中を押され、足をもつれさせながらセコンドに戻りヘルメットを取ると、ブライトウェルは心配そうに見るアントニナから『メタボメーカー』チューブを受け取り一気に口の中に流し込んだ。

「ちょっと、大丈夫?」
「足りません」
「は?」
 フレデリカがすかさずもう一本の栄養チューブを差し出したが、ブライトウェルは手を振ってそれを断り、アントニナの首に掛かっているタオルをもぎ取って額の汗を拭きながら笑みを浮かべて言った。
「声援が足りないので勝てません。アントニナ先輩、ちょっとスタンドを盛り上げてくださいませんか? お願いします」
「声援って……アンタ」
「あとこれからエリミネーションマッチになりますので、冷えたタオルと水がもっと欲しいです」
「一応用意はしてあるけど……エリミネーションマッチって、何?」
 フレデリカの問いに、対角線上の向こうに集まっている『同学科』のセコンドを見て、ブライトウェルは応えた。
「向こうは三三人います。一人三〇秒以下で始末するのでだいたい一五分。最短五ラウンドってところなんで、水とタオルそれぞれ一〇本ずつお願いします」
「はい? ちょっと、ジェイニー!」

 フレデリカに応えることなく再びブライトウェルはヘルメットを被りトマホークを持ってステージの中央に戻ると、ヘルメットのシェードを開いて勝ち気満々のマンサネラをよそに、無言でトマホークを構えた。興を削がれたと言わんばかりにマンサネラが首を振ると、スタンドから歓声が沸き上がる。

「分かっていると思うけど、アンタ宛じゃないからね。マンサネラ三回生」

 フォレストの一言に舌打ちを隠さずマンサネラはシェードを下ろしトマホークを構え、合図とともに第一ラウンド同様に襲いかかった。手も足も出ずにいる生意気なブライトウェルをこのラウンドで仕留める、そう思って上段に振りかぶった瞬間。マンサネラは腹部に強い衝撃を受けた。

 思わず前のめりに倒れ込むのを、トマホークを杖代わりにして堪えるつもりが、そのトマホーク自体に味わったこともない強烈な一撃が加えられ、マンサネラはそのままステージの床に膝をついてしまう。トマホークの行き先を探そうと首を廻したタイミングで、今度は背骨が折れたような強撃がマンサネラを床に叩
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