閑話3 きれいな戦慄 【第100話記念】
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噴き出す迫力には天地の開きがある。少しでも無駄に動けば体中が切り刻まれてしまうような、中将の暴風雪のような威圧感に比べれば、春の野原にふりそそぐやわらかい日差しのように生温い。
「何がおかしい?」
思わず零れた笑みを挑発と受け止めたのか、マンサネラ三回生が太い眉を吊り上げる。
「お前がケガをさせたあの一回生たちと同じだとでも思ったか?」
「まさかそこまで失礼なことは考えておりません」
あんな奴らの為に出張ってこなければならない貴方のご苦労には頭が下がります、と言ったら火に油を注ぐことになるのは目に見えているので、それ以上口を開かず視線をフォレストに向ける。
「勝敗は降伏するか戦闘不能の判定が下るかアタシが止めるまで。それまで一ラウンド三分間。休憩を挟みながら『戦技訓練』を行う。使用武器は訓練用トマホークと装甲戦闘服のみ。戦闘用ナイフもダメ。他に武器を持っているなら今出しな」
フォレストが両手を伸ばして双方に差し出すが、ブライトウェルもマンサネラも首を振る。
「次、お互いの訓練用トマホークを出しな。交換だ」
双方の手から訓練用トマホークが離されて、再びお互いの手に戻る。一応ブライトウェルもマンサネラから渡された訓練用トマホークに目を向ける。傷はついているが重さも太さもブライトウェルが持っていたものと全く変わらない。マンサネラも同じように確認したのか、二人の四つの瞳がフォレストに向けられる。
「双方、不満なしだね。じゃあヘルメット被って、握手しな。一応『同じ学科』の先輩後輩なんだろう?」
だがブライトウェルもマンサネラも握手するつもりは毛頭ない様子を見て、情けないねぇ、とフォレストは肩を竦めて零した。改めて双方がトマホークを構えたのを見て、フォレストは後ろ脚で二人から離れると右手をゆっくりと振り上げ、素早く振り降ろす。
先手を取ったのはマンサネラだった。有り余る筋力に任せて、上下左右からトマホークを振り降ろしブライトウェルを圧し潰そうとする。仮設スタンドにいる女子候補生からは悲鳴が上がるが、その周りにいる陸戦技術科の候補生からは呆れと軽蔑の声が漏れる。
マンサネラは前進し、ブライトウェルは後退している。一見すれば圧倒的にブライトウェルの劣勢に見えるが、マンサネラの重い一撃は、全て体幹で躱されたりトマホークによって打ち逸らされたりして、その威力を全く発揮していない。
しかもブライトウェルは真っすぐではなく僅かに右斜めに後退しているので、円を描くような形になりステージの端に追い詰められることもない。
見る者が見れば、二人の力量差は明らかだ。しかしブライトウェルは一切反撃せず、攻撃をひたすら受け流している。三分が経過し最初のラウンドが終わったあと、アントニナやフレデリカの待つセカンドに向かおうとするブライ
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