閑話3 きれいな戦慄 【第100話記念】
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っていた席に腰を下ろした。上級生が「座れ」というまでは座れない。階級と先任順序を骨の髄に染み渡らせるための士官学校の『規則』。しかし後輩を立たせておくのであれば話は手短に、長くなるようならすぐに座らせるのが士官候補生の『マナー』だ。
しかしルングは太い腕を組み、ブライトウェルに冷たい視線を送ったまま何も言わない。ブライトウェルとしても、友人知人でもない相手からこういう態度を取られることは、困惑以上に軽蔑を覚える。極力無表情でルングの両目を見据えつつ何も応えずにいると、周囲のテーブルからの警戒を感じたのかルングは強く一つ鼻息を吐いて言った。
「昨日、ウチの寮の一回生を可愛がってくれたみたいだな?」
「は?」
ブライトウェルは一瞬ルングがなにを言っているのかわからなかったが、数秒後に今日欠席している同期生の顔を思い出して納得した。手下がやられたから、若頭が出てきたということだろう。抗議文は寮長が出してきたということだろうから、直接本人に警告を出すのはその下の総務の仕事ということか。ロクデナシの後輩を持つと大変だなぁ、という同情心がブライトウェルの胸の中に沸きあがり、それは自然と微笑となった。
「『格闘戦の基礎訓練』ならいたしましたが、可愛がったつもりはございません」
そう言って手出ししてきたので、その通りに相手してやったんですよ、とブライトウェルは応えたつもりだったが、ルングの反応は派手に音を立てての机に対する殴打だった。
「貴様、格闘戦と言いながら武器を使っただろう」
「え?」
「三人はそう言っている。当然だな。そうでもなければ士官学校入校したばかりの女子候補生が、一回り以上大きい男子候補生を病院送りにできるわけがない」
目を血走らせ声を荒げるルングに、ブライトウェルは呆然とした。このデカブツは何を言っているんだろうか、全く理解できない。一人で状況を決めつけて、一人で勝手に怒っている。真実ブライトウェルが武器を使ったというのであればルングの言いようも分かるが、使った武器は拳と肘と脛だけだ。
「小官は武器など使っておりません。当の三名がそのようにルング三回生殿に言ったというのであれば、わが身可愛さに虚偽の報告をしたとしか思えません」
「貴様! 言い訳するか!」
「言い訳などしません。一方の証言のみ信じ、ご自身で見てもいない事実を決めつけることが、ルング三回生殿の正義なのですか?」
「貴様!」
ルングが勢いよく席を立ちあがり、右拳を握り締め、大きく振りかぶってブライトウェルの左側頭部へ振り下ろそうとする。そんな動きは散々ディディエ中将御用達のジムで見慣れていたので、ブライトウェルは瞬時に右半身として右手でルングのパンチを左に外受けしつつ、左掌底でルングの顎を打ちぬこうとした。
しかしル
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