第一章
[2]次話
大人しい神の愛
至高の神マルドゥークの息子の一人ナブーは文字と学問を司っている、その性格は非常に穏やかで優しい。
だがその反面秘蔵に妻を愛する神である、それでだ。
妻のタシュメート、ふくよかな身体と豊かな黒髪に穏やかそうな顔立ちを持つ彼女に対していつも言っていた。尚妻であるこの女神もまた非常に穏やかで優しい性格をしていることで神々から知られている。
「そなたがいるからだ」
「それ故にですか」
「私は幸せなのだ」
こう言うのだった。
「常にな」
「そうなのですね」
「だからな」
それ故にというのだ。
「いつも一緒にいたい」
「そして実際にですね」
「そうしている、そして」
妻にさらに言うのだった。
「二人だけならな」
「それならですね」
「来てくれ」
優しい声で告げた。
「いつも通りな」
「はい」
タシュメートはナブーの言葉に頷いてだった。
座っている夫の膝の上に向かった、そしてそこに座るとだった。
ナブーは妻に様々な宝石で飾られたネックレスやイヤリング、ブレスレットにベルトを着けていった。そして髪飾りも付けてだった。
そのうえでだ、妻を抱き締めて言った。
「こうしていられてな」
「幸せですね」
「何よりもな、何時までも一緒にいよう」
「はい」
妻は微笑んで応えた、そして夫の手に自分の手を添えたのだった。
そんな二柱の夫婦の神々を見てだ、美と愛の女神イシュタルは言うのだった。見ればそのこれ以上はないまでにといっていいまでに整い色香に満ちたその顔をその妖艶そのものと言っていい肢体露出の高い服に覆われたそれをどうにもという感じにさせている。そのうえで言うのであった。
「私の出る幕はないわね」
「息子夫婦にはか」
「はい、全くです」
四つの目を持つ神、ナブーの父神であるマルドゥークに答えた。その言葉にもまたそういったものが出ていた。
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