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熟年離婚
第三章

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「人にはあれしろこれしろで」
「人がしたことは鬼の首を取ったみたいに言って」
「自分がしても知らん振りで」
「あれこれ否定してきて」
「他人はね」
「そんな風だったから」
 だからだというのだ。
「離婚したのよ」
「そうよね、何でもね」
 佳穂理は母にお茶を出しながら話した。
「そうした人って多いみたいよ」
「旦那さんが定年したら別れる人が」
「そう、熟年離婚する人がね」
「理由は私みたいなことなのね」
「そうよ、それでね」
 そうした理由でというのだ。
「別れる人がね」
「多いのね」
「これがね」
「そうなのね」
「それで離婚されて」
 その別れた相手、ここでは自分の父のことを思って話した。
「何でそうなったかわからないそうよ」
「自分ではわからないのね」
「お父さんみたいにね」
 まさにというのだ。
「そうみたいよ」
「そうなのね」
「自分では気付かないで」
「奥さんや家族に愛想尽かされていて」
「あまりにも酷くてね」
 その性格や行いがというのだ。
「そうなることがね」
「わからないのね」
「そうみたいよ」
「そうなのね」
「お父さんがまさにそれね、もう私お父さんのところ行かないから」
 娘はあっさりとした声で言った。
「これからはね」
「ここで皆とよね」
「暮らしましょう、仲よくね」
「それじゃあね」
 明子は娘に優しい笑顔で応えた、そうしてだった。
 一家で幸せに暮らした、そして時々夫だった彼のことを聞いたが常に一人寂しくと聞いた。だが何故自分と別れることになったのかはわからないままだったと。


熟年離婚   完


                    2023・12・15
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