第三部 1979年
姿なき陰謀
如法暗夜 その2
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常に高価なものであった。
IBMのIBM 5100ポータブル・コンピューターなどの卓上型コンピュータが、日本国内でも発売されていた。
だが一台当たり最低価格が8000ドル以上と大変高価であり、1983年の段階でも300万円ほどした。
車よりも高かったので、基本的には、大企業などの限られた部門が購入できたに過ぎなかった。
しかも処理能力は、今日の携帯電話やスマートフォンに劣るほど。
その為、ある程度の計算はIBMのSystem/370の様な大型コンピュータに頼らざるを得なかった。
篁は、戦術機の設計をする都合上、System/360、System/370を個人的に購入していた。
IBMの日本法人から市価の半値ほどで、購入し、特別の電算室を自宅に備えていたのだ。
ブラウン管とにらめっこするマサキに、後ろから声をかける人物がいた。
屋敷の主である篁であった。
「どうだ、ソフトウエアの解読は出来そうか」
マサキは、火のついていない煙草をくわえながら、操作卓を連打する。
鍵盤を打つカタカタという音が、部屋中に響き渡る。
「パスワードは説いた」
「そうか、それなら」
マサキは、焦ることなく、ブラウン管の出力画面を注視していた。
「慌てるな。
ただその建物の入り口に入ったにしかすぎん。
こいつにはRSA暗号という特殊な仕掛けがしてあって、鍵の長さが100桁以上を超えた難物さ」
「分かるように説明してくれ」
「暗号とは、元のデータや通信内容を第三者や外部から解読できない状態にする処理のことだ。
RSA暗号とは、2つの素数を使って暗号化と復号を行う仕組みで、素因数分解を使う。
こいつを解こうとしたら、その規則性を探すだけで何年もかかるのさ」
RSA暗号とは、素数を掛けあわせた数字の素因数分解の仕組みを利用した暗号技術の一つである。
1977年に三人の米国人によって開発された。
「高速演算処理能力のあるスーパーコンピュータが必要だが、そんなもんはこの世界にはそうそうあるまいよ。
おそらく、米国のIBMか、MIT(マサチューセッツ工科大学)、ペンタゴン(国防総省本部)……
そのどこかに、1,2台あるぐらいさ」
その時、ミラが部屋に入ってきた。
彼女は、マサキと篁のために、焼いたばかりのクッキー、――厳密に言えば南部風のスコーン――と、熱いコーヒーを持って来たのであった。
「私は学生時代に、MITの電算室に行ったことがあるけど、そんなものを計算できる代物はなかったわ。
せいぜいIBMのSystem/370が、ずらっと並べてあったぐらいだわ」
一瞬、マサキの表情がほころんだ。
ミラが食いついてきたことに気を良くしたマサキは、思わせぶりに、
「この情報さえ、分析
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