第三部 1979年
姿なき陰謀
如法暗夜 その2
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合に、恩田技研の社長を招いて、密議を凝らしていた。
恩田技研では、社長室という物がなく、重役と社長が同じフロアを使っていた。
なので、こういった話し合いのたびに、マサキは身銭を切って、待合などに呼んでいたのだ。
待合とは、人との待ち合わせや会合のために席を貸すことを主とした飲食店である。
今日でいうところの料亭の事であり、今でも京都で茶屋といえば、待合茶屋の事を指す。
ただし、京都以外の場所で、茶屋という言葉は、出会い茶屋や色茶屋であった。
今でいうところの、連れ込み宿――俗に言うラブホテル――や、風俗店の類を指す言葉である。
なので、使用にはくれぐれも注意が必要である。
「恩田、お前の方で政財界の資金源を調べてほしい」
「はい」
「五摂家の連中の資金源となっている銀行の一つを見つけて、頭取と会う算段をしてくれ」
五摂家とは、日本帝国を事実上支配している、元枢府を運営する五大武家の名称である。
煌武院、斑鳩、斉御司、九條、崇宰。
この異世界では、元枢府とは別に、帝国政府が存在した。
近代的な帝国議会、内閣、大審院(今日の最高裁判所)があった。
現実世界に当てはめれば、イランイスラム共和国を構成する革命評議会とイラン政府の関係に例えられよう。
斯衛軍と帝国陸海軍の関係も、さながら革命防衛隊とイラン共和国軍の関係に近似していると言えよう。
「それは、まさか!」
「たとえば、崇宰や、斉御司でもいい。
奴らの政治資金の源泉となっている銀行の一つを調べるのよ」
「そうだな、大蔵省の破綻金融機関リストに載っていて、今は経営が回復した銀行の一つや二つを探って来い。
公的資金の注入がなされた銀行のリストが欲しい」
この時代では、民間銀行の監督管理は、大蔵省が行っていた。
金融行政が大蔵省から分離されたのは、1998年(平成10年)の行政改革以降である。
「五摂家の、金の出どころさえわかれば、日本の政界を牛耳るのは簡単だからな」
「では、いよいよ乗っ取る算段を……」
「金の流れさえ止めれば、俺の本当の敵が出てくるはずだ」
俺が動きさえすれば、必ず奴らは阻止しようと動いてくるはずだ。
この世界を牛耳る何者かが、牙をむいてくる。
その時の武器は、情報と金、そして天のゼオライマー。
銀行の一つや二つを乗っ取って、闇金の個人名簿さえ手に入れば、俺は権力と真っ向から戦える。
夕刻。
マサキは再び篁亭に来ていた。
理由は、個人用の大型コンピュータが、屋敷の別棟にあったためである。
この時代のコンピューターは、非
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