第一章
[2]次話
裏方あってこそ
その歌劇場は欧州でも有名な歌劇場であり世界的な歌手が常に出演していてオーケストラも世界屈指である。指揮者に至っては巨匠と言われるまでの人物だ。
音楽監督である小河耕作は日本で有名な音楽家で髪の毛はなく皺だらけの顔で温厚な顔立ちで一七〇位の背である。
その彼はいつも自ら率先して動いていたが。
「あの、そうした仕事はです」
「こっちでやりますんで」
「お気遣いなく」
「それにいつも優しい声をかけてくれますが」
「別に」
「いや、皆でだよ」
小河はいつも歌劇場のスタッフ達、照明や大道具を担当する者達の中に入って働きながら笑顔で話した。
「やらないとね」
「こうした仕事をですか」
「裏方の」
「それをですか」
「駄目だってね」
その様にというのだ。
「私は思ってるんだ」
「それで、ですか」
「ご自身が率先されてですか」
「そのうえで働かれるんですね」
「そうだよ」
実際にというのだ。
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