第100話 半端者
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宇宙暦七九〇年 九月 バーラト星系 惑星ハイネセン
喧嘩別れのような話し合い以降、エベンスとは業務上必要最低限の会話しかしないようになった。まぁ、これは仕方がない。先に挑発してきたのはエベンスの方だし、何か仕掛けてくれば状況に応じて対処する、でいいだろう。業務にも支障をきたしているわけでもない。
と、いうより現時点ではマトモな業務がない。普通は予算折衝が終わったらすぐに新年度の予算に向けてまた仕事を始めるのだが、そっちの仕事はパッタリなくなってしまった。それでいて面会者に接待にゴルフに会食は継続的にあるので、時間に妙な隙間ができて逆に迷ってしまう。
こういう時にピラート中佐はどうしていたのか。胸が開いた画面の向こうに出てくるようなものから、第一ボタンまでキッチリと封がされ、僅かにフリルの付いた清楚系に装いが変わったチェン秘書官に聞くのは正直躊躇われた。『休憩』すればいいといっても微妙すぎて聞けるわけがない。ちなみに国防委員会本部ビルにはシャワー室も仮眠室も簡易ベッドも完備されている。
「有給休暇のご申請ですか? もちろん私のほうで手続きは可能ですわ」
……一応上官である首席補佐官ロビン=エングルフィールド大佐に申請を出さなければならないのだが、大佐も外出が多い人だ。当然のように専属の秘書官がいて、そういう申請は秘書官同士のやり取りで事が済むらしい。
「スケジュールの調整はお任せくださいね。今ですと……押し込めれば四日程度はひねり出せると思いますわ」
むんっと両握り拳を豊満な胸の前で握る仕草と無邪気さすら感じさせる微笑みは、とてもアラフィフの情報機関工作員とは思えない。大人の色艶を減らしつつ、デキるキレイ系成分を増やしつつあるのは、俺を『殺し』にかかっている疑いもある。それが本人の意思なのか、それともCの七〇の指示なのかまでは分からないが。
「四日でしたら、三泊でちょっとしたご旅行ができますわね。ご希望の観光地とかございますか? それとも中佐はグルメの方がお好みですか?」
「ハイネセン第一軌道造兵廠を見学しようと思っているんですが」
「そうですか。造兵廠を……造兵廠ですか? 衛星軌道リゾートではなく?」
「そのつもりですが?」
当然のように答える俺に、チェン秘書官は呆れましたと言わんばかりに、肩を落として大きな溜息を吐く。あまりにもあからさま過ぎて、演技と思えないくらいに。
「大気圏の妨害もなく銀河の全てが見渡せる全球型ナイトプールは、地上では到底味わえない最高のレジャーと言われております。特にユーフォニア・HD傘下のホテル・ミローディアスの全球型低重力ナイトプールは、同盟最高のホスピタリティと合わせて、極上の休暇を楽しむことができますわ」
「もう銀河の星を見るのは飽きたよ
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