第三章
[8]前話
「鍛えていくんだ」
「そうだよ、ただな」
ここで実夫は尋ねた。
「琴子のジャンル何だよ」
「格闘技のか」
「ああ、何だよ」
「薙刀だ」
父は一言で答えた。
「それだ」
「おい、薙刀ってな」
そう聞いてだ、実夫は言った。
「相当強いだろ」
「ああ、それがしたいらしくてな」
「そうか、若しかしたらな」
「家族で一番強くなるかもな」
「私？ならないよ」
琴子本人はこう言った、食べている量は一番少ない。
「家族で一番小さいのに」
「今はそうでも将来はわからないぞ」
実夫は真顔で言った。
「本当にな」
「そうなの？」
「ああ、だから今は無理をしないでな」
「やっていくの」
「そうするんだ」
こう末の妹に言った、やがて兄弟姉妹はそれぞれ警官やガードマンやプロになってそれぞれの道で生きていったが。
琴子は学校の先生それも薙刀部の顧問にもなった、そして実夫の言った通りにだった。
薙刀五段の彼女は段位は柔道八段の父にも空手六段の兄、世界チャンピオンの兄、マーシャルアーツ世界大会優勝の姉、剣道五段の姉、中国拳法師範の兄、古武術免許皆伝の母そして数多くの大会で圧倒的な強さを見せる実夫にも組手で勝った、それで言うのだった。
「やっぱり最強はな」
「私なの」
「そうだよ、薙刀はな」
この武術、格闘技はというのだ。
「武器だし間合いが広いからな」
「それで振って突くから」
「物凄くな」
こう言っていいまでにというのだ。
「強いんだよ」
「他の格闘技と戦っても」
「ああ、だから組手だとな」
「家族の間で」
「お前が一番だよ」
「末っ子なのに」
「末っ子でもな」
それでもというのだ。
「それぞれのジャンルで組手やるとな」
「異種格闘技の感じでね」
「本当にな」
まさにというのだ。
「最強はな」
「私ね」
「ああ、末っ子でもな」
それでもとだ、実夫は末の妹に話した。話すその顔は明るい笑顔であった。
鍛えられた妹 完
２０２４・４・２０
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