第3部
サマンオサ
新たな旅路
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ゃん、何か考えがあって行ったんだよ。とりあえずあたしたちはここで待とう」
「う、うん……」
「ホントあの陰険勇者、自分勝手だよなー」
突然リーダーが離脱して心中穏やかでない私とは裏腹に、二人はやけに落ち着いている。
ここは二人の言う通り、大人しく待つことにしたのだった。
ユウリが戻ってきたのは、既に日暮れ時を過ぎた時間だった。
本来なら既に開門時間は過ぎており、ロマリアの兵士たちも城へ戻らなくてはならないのだが、事情を知っている若い方の兵士が、親切にもユウリが来るまで待ってくれていた。
「大丈夫? 随分遅かったけど」
「これでも大急ぎで戻ってきたんだ。無茶言うな」
そう言われては納得せざるを得ない。なんて思っていると、待ってくれていた兵士がひょっこりと顔を出した。
「あの、そろそろよろしいですか?」
「あっ、はい、すいません!!」
慌てて私が返事をすると、若い兵士は扉から少し離れた小さい建物へと案内してくれた。
そこは、以前皆でこっそり寝泊まりした場所であった。それを懐かしみながら通ると、前を歩いていた兵士が扉の前に立ち、持っている鍵で扉を開けた。
中には、私たちにはお馴染みの旅の扉があった。水面に渦を巻いたようなその出で立ちは、相変わらず眺めるだけで不思議な感覚に陥る。
「この旅の扉を通れば、サマンオサの国境付近に辿り着けます」
「ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして」
お礼を言うと、兵士は朗らかに笑ってその場に立っている。私たちが今旅の扉に入るのを見届けてから鍵を閉めるのだろう。
「じゃあ、早速行くぞ」
すっかり旅の扉に慣れたユウリが、先陣を切って飛び込む。長い船旅で、すっかり乗り物酔いに耐性がついたようだ。旅の扉を乗り物と表現していいのかはわからないけれど。
私たちもすぐに追いかける。うーん、この視界が滅茶苦茶になる感じはなかなか慣れることができない。
そして長いとも短いともとれる時間が過ぎ、半ば放り出されるように扉から飛び出した。
辺りを見回すと、ロマリアの関所と同じような内観の建物だった。こちらから旅の扉に入る人は殆どいないのか、建物内には兵士どころか人っ子一人いない。
「随分と寂しいところだな」
ナギの言うとおり、ロマリアの関所と比べて、こちらは建物も薄暗く、床や壁はあちこちひび割れている。いつ魔物が現れてもおかしくないほど荒れ果てていた。
「長い間ほったらかしにされてたって感じだね〜」
シーラも辺りを警戒しながら呟く。
「ホントにこの先にサマンオサなんてあるのかな? ……って、どうしたの、ユウリ?」
我先に旅の扉を抜けたはずの勇者は、先を進もうとする私たちの後ろで建物に背中を預けて俯いている。近づいて様子を窺おうとしたら、私の気
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