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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
困憊するあたしは、奴らを逃がす
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で拙僧はやり方を教えただけ。あの姦姦蛇螺を退治し、調伏させ、悪行罰示神として服従させたのは真誉殿自身の力にて。」
「…!?」
「強いて言えばそう。拙僧はあくまで背中を少し押した程度に過ぎませぬ。拙僧がいなくとも、真誉殿はその気になればあらゆる怪異を式神として使役できていたでしょうな。」


デタラメを言う。
力を込めて脱出しようとするも、中々抜けない。
そしてモタモタしていると

「ならば…拙僧からも一つ!!」

浮遊感。
その剛腕であたしは上へと持ち上げられ。

「そなたのもうひとつの人格、随分と式部殿から優遇されているようで…。」
「…!!」

そのまま地面に叩き付けられた。

「あ…ぐっ…!!」
「菫殿…でしたかな?」
「うる…さい…!」

グラりと揺れる視界に顔を顰めつつ、なんとか起き上がる。
ナメられている。
明らかにあたしは今隙だらけだ。
道満は待っている。
何もせずに、薄ら笑いを浮かべてこちらを見ている。

「当初はあなたから分かたれた別人格。切り捨てた感情が固まって出来たそれが名を与えられたことにより個≠ニなった。」
「うるさい…!」
「はて、ここで拙僧は疑問に思うのです。式部殿は果たして、葵、菫、一体どちらが大事なのでしょうと。」
「うるさい!!!」

全部の気を集中させて、凄まじい速さで殴る。
しかし効かない。
またもや受け止められてしまう。

「まぁまぁ落ち着いて。拙僧の話を最後まで聞いてくだされ。」
「黙ってろ…お前の話に割いてられる時間なんか…一秒もないんだよ…!!」
「困りました…真誉殿からも何か仰って頂けましょうか?」

呑気に話す道満。
黙らせてやりたい。だが、生憎あたしの拳は届かないらしい。

「葵ちゃん、すぐイライラするしすぐ手が出るよね。牛乳とか飲んでみれば?」
「ぶっ殺した後にたらふく飲んでやるよ…!!」
「ふーん…そっか。」

柏手を、一つ。
すると彼女の周囲にいくつもの黒い布状のものが現れる。

「じゃあ、殺される前に殺すね。」

一斉に襲い掛かる鞭。
空気を裂く音。
同時に道満が離れ、開放される。
最低限の動きでかわし、落とせるものは叩き落とす。

「…!!」

直感で振り向くと、そこには黒い影の使い魔。
あたしを囲み、そのまま倒れて押し潰そうとしてくる。

「させません…!!」

香子の声。
(まじな)いを込めた文字を瞬時に綴り、それらが弾となって使い魔に撃ち込まれる。
それらは着弾した後に破裂。
姿勢を低くし、あたしはまた駆けた。

「…!」

駆けたのだが…

【あの陰陽師の言う通りだ。優遇されてるのは、愛されてるのはボク?お前?どっちだろうね?】

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