第三部 1979年
姿なき陰謀
権謀術数 その3
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ることが内定していた。
さて。
グラナンの動きに焦りをみせたのが、航空機製造大手のロックウィード(現実のロッキード)であった。
ベトナム戦争終結とBETA戦争による航空機需要の減少によって、軍事部門・民間部門合わせて赤字経営に転落していた。
同社は戦術機開発にも出遅れており、その遅れを挽回すべく各国に、様々な資金工作を行った。
ロックウィードは、西側各国に秘密代理人を置き、各国の政府高官に多額の賄賂を渡して、航空機P−3Cオライオンの売り込みを図っていた。
この事件は、日本のみならず、蘭、ヨルダン、メキシコなど多くの国々の政財界を巻き込んだが、米本国も無関係ではなかった。
敵対する同業他社のマクダエル・ドグラム(現実のマクドネル・ダグラス)も、その事件を受けて、焦りをみせた。
マクダエルの秘密代理人は、政府首脳や国防省関係者――国防大臣や国防政務次官の榊だけではなく、参謀本部直轄の技術部門にまでその手を伸ばした――だけではなかった。
マサキの所まで、マクダエルの秘密代理人が現れたのだ。
「話とは何だ」
マサキに現れた男は、 斑鳩家の老当主だった。
座るなり、雑誌のゲラ刷りを彼の前に広げて見せ、
「これは週刊誌「男性自身」のゲラ刷りだ。数日後には店頭に並ぶ」
――記事の内容は、センセーショナルなものであった――
『現職軍人に黒い交際!?
陸軍木原准尉と東ドイツ軍某大尉との深い関係。
次期戦術機開発の裏に東側の影』
「これが出たら、どうなると思うかね……
私の一存でこの記事は差し替えることが出来る」
「それを条件に、戦術機開発から俺の身を引けと……」
「引退?
私がそんな事を望む人間に見えるかね」
老人はいきなりゲラ刷りの原稿を破り去った。
「木原君、君には貴族院議員になってもらった後、大臣のポストを用意する」
「何!」
「私は政治家だ。
ただ権力にしがみついているだけの老人ではない……
貴族院への推薦は、私としての君への評価だ」
「……」
「15年だ、15年待ちたまえ。
そうすれば、君が思う通り、この国を動かせる」
「……15年」
「そうだ……いずれは武家をこの国を裏から操る地位を継いでもらうかもしれん。
悪い話ではないはずだ」
男の話を聞くなり、マサキは不敵に笑った。
「フハハハハ、今すぐこの国を乗っ取れるなら、その条件を飲もう」
男はマサキの言葉に、途端に驚愕の色を表す。
「な、何ぃ!」
立ち上がったマサキは、見下すような目線を男に向けて、
「話は済んだ。帰るぞ、美久」
「わかりました」
男は、マサキの予想外の反応に、大いに慌てたらしく、
「待ちなさい、氷室さん。君は木原を止めんのかね。
こ、これが発表されたら、君たちがやってきたことは全部水泡
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