第3部
サマンオサ
小さな淡い想い(???視点)
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親はお咎めなし、ということになった。けれど身内が国家反逆罪という大罪を犯した代償はあまりにも大きく、家や財産はほとんど奪われ、さらには犯罪者の息子というレッテルを貼られたことにより、周囲からはますます忌み嫌われるようになった。
それでもフェリオは僕たちを見捨てたりはせず、自分が魔物を倒して得た素材をお金に変えたりして、僕たちに渡してくれた。幼い僕はそれが甘えだとも知らず、かつて勇者ともてはやされたサイモンの妻としてのプライドを捨てきれなかった母がフェリオの支援を断るまで、ずっと彼がそばにいてくれるものだと思っていた。
「ルーク。これからは二人だけで生きていくのよ。誰にも頼らず、自分だけを信じて生き延びていくしかないの」
フェリオが去ったあと、母はそう僕に言い聞かせるようになった。ほどなく昼夜問わず働きに出るようになった母だったが、元々体が弱かったためすぐに体調を崩し、家に引きこもってしまう。
それから極貧生活が始まった。あの頃が一番肉体的にも精神的にも辛かったと思う。
僕が初めて働きに出たのは12歳の時だ。少しかじった程度の武術しか取り柄のない僕ができるのは、魔物退治くらいだった。それでも街に蔓延る魔物ならどうにか倒せた。封印していた呪文も誰もいないところで使いまくった。時には職場の先輩の手柄を横取りするようなこともしたり、指定された以外の場所で魔物を倒したり、とにかく食べていくために必死で働いた。
そんなことを何年も続けていたら、細かった体は筋肉がつき、背も随分伸びた。周りからは見向きもされなかった僕が、数年経つと見知らぬ女性から何度も声をかけられるようになった。まあ、ミオ以外の女性に興味はないけれど。
それでもこの国の不況のせいか安定した職には就けず、毎日が日雇いの生活だ。
毎日夕暮れの町並みを眺めては、寂寥感に苛まれてため息をつく。
ああ、君にもう一度会えたら、どんなに嬉しいことだろう。どんな形でも良い。もし君に会えたら、今度こそ伝えよう。僕の本当の気持ちを。
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