第3部
サマンオサ
小さな淡い想い(???視点)
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でいる。
働けなければ収入も得られない。ほとんど無職の母親と二人で暮らすには薄給でも仕事は選べない。過酷な労働を強いられても文句は言えず、毎日が貧乏との戦いだ。
僕は今日の収入を懐にいれると、とぼとぼと家路に向かった。
ああ、何てつまらない人生なんだろう。
仮にも魔王退治の旅に出た勇者の息子が、こんな卑しい生活を送っているなんて、僕はなんて惨めなんだ。
こう言うとき、決まって僕はあの時のことを思い出す。18年の人生で一番楽しかったときのことだ。
??ミオ。彼女だけは、絶対に生涯忘れない。
僕に生きる価値を見いだしてくれた女の子。初めての友達であり、……初恋の人でもある。
彼女と出会ったのは、僕がフェリオと共にカザーブにやって来たときのことだ。
すでに彼女は武闘家であったフェリオの弟子であり、彼の家に初めてやってきた日も、彼女はそこで武術の修行に励んでいた。
その頃の彼女の印象は、至って普通の元気な女の子でしかなかった。初めて挨拶したときも、何と言ったか全く思い出せない程だ。
けれど、彼女は毎日師匠の家に来ては修行に励んだ。僕より年下の女の子が、どうしてここまで武術を続けるんだろう、次第にそんな疑問が湧き出てきた。
あるとき僕は、隣でいつものように正拳突きの練習をしている彼女に尋ねてみた。これまで他愛のない話しかしてこなかった僕が、初めて彼女のプライベートに関わる質問をした瞬間だ。
「ねえ、なんで君は毎日武術の修行をしているの?」
純粋な疑問だった。すると彼女はキョトンとした顔で、
「はやく強くなって、この村をまもりたいから!!」
そう明るい声で答えたのだ。
こんな小さい身体で、なんて大きな夢を言える子なんだろう。僕が二番目に抱いた印象はこれだった。
この会話をきっかけに、僕とミオは仲良くなった。どちらかと言えば、ミオの方から話しかけてくれていた気がする。彼女も僕と同じように、同年代の友達はいなかった。だからなのか、お互い『友達』と言う存在が欲しかったのかもしれない。
カザーブにいる間、僕がミオを『友達』として見る期間は信じられないくらい短かった。
武術の才能がなく、師匠のフェリオに叱られていたとき、いつも側に来て励ましてくれたのはミオだった。それでも、どうしても落ち込んだときは、僕の手を取り、ミオは決まってこう言った。
「修行がイヤなら、ぬけだしちゃおうよ!」
その言葉に、僕はどれ程救われたことか。彼女にとっては師匠へのちょっとした反抗としか考えなかったかもしれないが、僕にはその言葉が、自由への扉が開いたように感じた。
彼女が僕を連れ出した先は、決まっていた。幼い頃彼女の友達だった子達が好きだった、高台の下のコスモス畑。彼女の友達はもういないけれど、あのコスモス畑に行く度に、
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