勝者は・・・
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に打って出た。
(勝負を諦めたか?シリル)
これによりほぼ負けることがなくなったエルザは水着姿のまま紅桜へと握り変え、迎え撃つ。
「ん?」
さすがの泳力で目の前まで来ていた少年の表情が目に入ったエルザは困惑した。なぜなら彼は追い込まれているはずなのに、口元を緩めたからだ。まるで自らの作戦にかかった獲物を見るように。
(何を笑って―――)
その表情の真意は不明だが、彼女は本能のままに射程圏内に入ってきた少年へと剣を振るう。これをシリルは回りながら回避すると、剣を握る右腕へと体当たりする。
「なっ・・・」
その衝撃で彼女の手から紅桜が離れてしまう。慌ててそれを拾おうとしたエルザだったが、それにより少年から目を切ってしまった。
「竜魔の鉤爪!!」
「ぐっ!!」
顔を下げたところを狙っていたかのように足を蹴り上げたシリル。それは見事に彼女の咥えていた魔水晶を捉えると、瞬く間に水中へと跳ね上がった。
「これは決まったな」
「どういうことだ?」
舞い上がった魔水晶それを見たレオンは小さく呟き、リオンはそれがどういうことなのかわからず問いかける。
「シリルが意地でも自分の魔水晶を使わなかったのはこれを狙っていたからだ」
「これ・・・あ」
いまだに狙いがわからずにいたリオンだが、すぐに少年の出た行動がその答えを物語っていた。シリルは自身の目の前に浮いてきたそれを掴むと、すぐさま口へと咥える。
「そうか!!シリルは最初からエルザの酸素を奪うつもりだったのか!!」
「これなら自分のタイマーも元通りになるし、対するエルザさんはもう酸素を持ち合わせていない」
さらにシリルはここまで無呼吸だったこともありすぐさま距離を取り酸素を吸い込む邪魔をされないようにしている。なんとか剣を掴んだエルザだったが、これでは酸素を奪い返すことができない。
「エルザさんが勝つなら逃げてシリルに自分の酸素を使わせながら、彼女自身は消耗を抑えて逃げ切るしかなかった。でも、剣士としてのプライドが邪魔したんだろうね」
一瞬は脳裏を過った距離を置く選択。彼女が勝利するならばそれが最善の手立てだったが、彼女はそれを取ることができなかった。
「これはシリルの作戦勝ちだったね」
追い付こうにも二人の泳力の差とエルザの残り時間を考えればそれが叶わないことがすぐにわかる。それを察知した剣士は肩をすくめ、首を横に振ってみせる。
『エルザ選手退場カボ!!よって勝者!!シリル選手カボ!!』
アナウンスと同時に右手を突き上げる少年。その姿に会場中から大歓声が巻き起こるのだった。
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