§XX お久しぶりの閑話です
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彼がそいつを見たのは、全くの偶然だった。
春、出会いと別れの季節。慣れ親しんだ母校を卒業する、そんな日の晴れた昼下がり。
あちこちでみんなが泣いたり泣いたり泣きながら笑ったり。新たな門出を祝い、再会を誓い。彼の例に漏れず旧友との別れを惜しみ。皆と写真を撮った帰り道。
「カァ、カ、カーァ」
「ふーん。なるほどねぇ……田中さん家でそんな事が」
変人がいた。道端でしゃがみこんでぼそぼそと。最初は独り言かと思ったら、どうやらカラスと話しているらしい。なんだそれ。
「カー、カァ」
「え、なにそれ超ウケるんだけど。……でもそこは見て見ぬ振りしてあげて!」
「カーカー」
「えぇ……しゃーないな。わかった。食パンで手を打とう」
「カー」
「はぁ!? メロンパン!? ちょっとそれは足元見す」
「カァ?」
「……わかりました。メロンパン3つで」
「カァ」
「畜生!!!」
勝手にキレて走りだすそいつを見て、彼は思った。
--こいつヤバいやつだ。関わらないようにしよう。
パッとしない外見はクラスカーストで行ったら最下位グループだ。大方、卒業式後のこの時間、親は来てくれずに友達もいなくて暇になり、カラスと話しているフリをしている寂しい奴なんだな、と。その時はそう思った。これから友人と会う予定でった彼はその光景を傍目で見ながらーー通り過ぎた。
***
そいつと次に会ったのは、なんとその日の夜だった。仲良かった奴ら男女関係なく集まって食べ放題。進学先が一緒のやつも多いから、このメンツで集まってもあまり悲しいカンジはしない。なんなら一か月後も集まってバカやってる気がする。そんな集まり。
「あ。--さん」
彼の視線の先には小柄なクラスメイト。地味目な容姿だが、強いて言うなら美人、というよりは可愛い系か。そんな彼女は当然、クラスで目立つことも無い。彼も時たま話す程度だ。なんでも兄がオタクらしく、そういう系にも偏見があまりない、オマケにおおらかで大抵のことは笑って流す良い子、とは友人の談。口さがない人は”オタサーの姫”などと言って笑うが正直言いすぎだと思う。思う分には自由なので訂正したり庇ったりする気はない。そんな彼女を何故見たか。それはいたって単純で。
「あの変なやつが兄か」
なんとあのおかしなやつが彼女を迎えに来ている。あれが兄か。なるほど。道端でカラスに話しかける変人を兄に持てばクラスの気持ち悪い連中の方が遥かにマシだろう。彼は心の中で彼女に同情した。せめてイケメンなら許されただろうが、ひいき目に見てフツメンだろう、あれは。
「……いやイケメンでもカラス相手にアレはキツいって。しかし迎えに
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