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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第196話:人ならざる者の苦悩
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訳じゃ……ただ僕は、僕を認めなかった奴らを見返したくて……」
「だが結果的には、アンタはその本当の恐怖とやらから、この星を守るために動こうとしてくれてるって訳だろ。なら過程はどうあれ、アンタが俺達を助けようとしてくれてたのは事実じゃねえか」
颯人の言葉を傍から聞いていた奏は呆れた。それは幾らなんでも屁理屈だし曲解にも程がある。アダムが語った本当の恐怖云々は所詮建前で、本心は自尊心を満たす……つまり自分が失敗作などではなく優れた、頂点に立つに相応しい存在であるという事を周囲に求めさせたいが為の事である事は明白だった。
しかし、颯人は敢えてアダムの事を褒めちぎった。だがそれは決して憐れみとかそう言う同情的な感情から来るものではない。
「ただまぁ、アンタのやり方じゃ世界がとんでもない事になっちまう。人とロクに接してこなかったアンタじゃ、どうせ何やったって破綻するだけだぜ?」
「フン……知った風な口を……」
「だからさ……ちっと頭を冷やして考えてみろって。そうすりゃ、もっと平穏で、アンタが望むものも手に入るかもしれないぜ?」
「望むもの?」
この戦いの中で、颯人はアダムとワイズマンの確執を知った。そしてそれにより、彼はアダム自身が意識していない本当の望みに気付いたのである。
「仲間……いや、友達か? アンタが本当に欲しかったのは、それじゃねえかな?」
「ぁ…………」
「でなきゃ、爺ちゃんに裏切られてそこまでブチ切れる訳がねえ。信じていたから、信じたかったから、裏切られて悔しくて悲しかったんじゃねえの?」
それに対する答えは簡単だ。否と言えばそれでいい。それだけで、颯人の考えをアダムは否定できる。
たった一言……そのたった一言で全てを否定出来る筈なのに…………アダムの口からはその言葉が出て来なかった。
「ん……ぐ……」
言葉に詰まるアダムを前に、颯人は目をクルリと回しその巨体の直ぐ傍に腰を下ろした。
「悪いな、俺はアンタほどの酷い裏切りにあった事はねえ。だからアンタの気持ちや苦悩は想像する事しか出来ねえ。だがな、これだけは言える」
揺れるアダムに対し、颯人は彼を真っ直ぐ見つめながらその一言を口にした。
「生きろ」
「!」
「アンタさっき、生き恥晒すとかどうとか言ってたが……生きる事の何が恥ずかしい? 生きる事に必死になりこそすれ、それを恥ずべき事と思う必要が何処にあるよ? 生きる事ってのはな……そんな簡単な事じゃねえんだ」
それはついさっきまで命の危険に瀕し、そして1人の女性に生きて欲しいと言う願いだけで生きてきた物だからこそ口に出来る言葉だった。颯人が奏を見れば、彼女もまた真剣な表情でアダムの事を見ている。その視線と、先程の颯人の言葉にアダムは息を飲んだ。
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