黎明編 仮面ライダースパルタンズ 第2話
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ふと、戦士達の脳裏にある景色が過ぎる。死地に飛び込まんとする瞬間に彼らが観たそれは、ある種の「走馬灯」だったのかも知れない。
浮かび上がって来るのは、この戦いから数日前のこと。エンデバーランドの陸軍基地で、スパルタンシリーズの運用実験を繰り返していた頃の景色だ。自分達の勝利を心から信じ、勇ましく笑い合っていた時の光景が、ジークフリート達の目に浮かんでいる。
――その日の戦闘訓練を終えたマルコシアン隊が演習場から基地に帰還し、隊員達が専用の格納庫内にスパルタンハリケーンを停めた後。深緑の愛車から降りた彼らは、強化外骨格の上に羽織っていた暗緑色のライダースジャケットをおもむろに脱ぎ始めていた。
小銃を咥えた猟犬の部隊章。その独特なマークが胸に描かれている本革のライダースジャケットが、スパルタンハリケーンの車体にバサリと被せられて行く。
そんな中、レオン・ロスマン中尉は仮面だけを外したまま、じっと手元の写真を見つめていた。そんな彼の背中に声を掛けたヴィルヘルム・フリードリヒ・フォン・ライン・ファルツ中佐は、写真に映されていた少女の笑顔に頬を緩めている。
「なんだロスマン中尉、また娘の写真か」
「あっ……ファ、ファルツ中佐!」
「隠さなくても良い。愛する家族との思い出を、戦場に赴く勇気の糧とする……それは私も同じだからな」
死地に立つ兵士だからこそ、帰りを待つ家族のことを忘れてはならない。それを信条とするヴィルヘルムも、レオンと同じ気持ちだったのだろう。彼も腰部のベルトから1枚の写真を引き抜き、部下に見せている。
そこに映されていたのは、立派な馬の上に跨っている1人の美少女。豪奢な金髪を靡かせる、溌剌とした笑顔が眩しいヴィルヘルムの一人娘――ヴィクトリアだった。
「これ、ヴィクトリアお嬢様ですか? 凄いじゃないですか、まだ4歳なのに乗馬も出来るなんて!」
「ふっ……乗馬と言っても、騎馬警官殿の前に乗せて貰っているだけだがな。この写真は合同訓練のためにアメリカに赴いていた頃、ニューヨーク市警のオネスト・ウェルフリット警部殿に娘の面倒を見て貰っていた時のものだ。『馬に乗ってみたい』とうるさかった娘の我儘にも、彼は快く付き合ってくれていた」
「お嬢様の後ろに跨ってる人がそうなんですか? 凄く精悍で、美丈夫って感じの人ですね……」
ヴィクトリアの後ろで馬の手綱を握っている、ニューヨーク市警の騎馬警官――オネスト・ウェルフリット警部。艶やかな金髪と蒼い眼を輝かせている、非常に端正な男だ。ヴィルヘルムもかなりの美丈夫なのだが、彼の美貌はそれ以上だとレオンは感じている。
「あぁ、彼は素晴らしい騎馬警官だったよ。聞くところによれば、
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