服従させる魔法《アゼリューゼ》
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「むにゃむにゃ………」
えりかの背中で、結梨が穏やかな寝息を立てている。
夜も遅くなったころ。
ハルト、コウスケは、えりかと結梨の帰宅に付き添っていた。
電車で見滝原北にある大学、その近くにあるアパート。そこが、彼女たちの住まいらしい。
配置からして、駅から直接行くよりも大学を経由した方が近い。
「すっかりぐっすりだね」
ハルトは結梨の寝顔を眺めながら呟く。
えりかも彼女へほほ笑みながら、「はい」と頷いた。
「今日は本当にありがとうございます。結梨ちゃんもとても楽しそうでした」
「えりかちゃんは?」
「もちろん、蒼井も楽しめました!」
彼女のこの笑顔が、偽りによって作られたものなど、果たして誰が言えようか。
「何か、えりかちゃん本当に結梨ちゃんのお姉ちゃんみたいだね」
「それココアとチノに聞かれたら発狂モンだな」
コウスケのコメントを流し、ハルトはようやく見滝原大学に戻って来た。
すっかりこの場所に通うようになったハルトだが、夜、人気のない時間帯にあの地下室に降りるのは未だに勇気が必要になる。
そんな見滝原大学の校門。かなり年季が入ったその校門は、果たしてどれだけ多くの人々の人生の門出を祝ったのだろうか。
「夜の学校って、小中高どこでも不気味だけど、大学はその感覚若干薄れるね」
ハルトはキャンパスを見渡しながら呟いた。
校舎のほとんどが消灯している小中高とは異なり、大学の建物にはまだ明かりが灯っている。街灯の存在もあって、大学という施設というより、町にいる感覚になる。
「まあな。ゼミなんか、この時間までやることもあるし、サークル活動だってこの時間まで何かをすることも珍しくねえ。そもそも、一部の講義もこの時間にやってたりするしな」
「ふうん……」
もう見慣れてきた見滝原大学のキャンパス。大学を彩る緑を眺めながら、ハルトたちは教授が待つ建物へと向かう。
だが。
「……おい、何だあれ?」
コウスケはふと、足を止めた。
「コウスケ? どうかした?」
「何か……コスプレみたいなのがいる」
コウスケが指す先。なるほど確かにと、その場にはコスプレにしか見えない存在がいた。
まず目を引くのは、ショッキングピンクな髪色。両側を複数の三つ編みにまとめて下ろしたその少女は、その顔付きも相まって、今えりかの背中で寝息を立てている結梨に近しい年齢に思える。
そして何よりも目立つ、彼女の頭部。まるで鬼のような角が二本生えており、あたかもこの世界とは別物の雰囲気を醸し出している。
植木周辺でしゃがんでは手にした天秤を振り、また別のところで同じ動作を繰り返す。
「何をしているんでしょう?」
えりかも彼女のことが気に
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