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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第98話 人と人
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大佐でもカステル大佐でも、なんならモンシャルマン少将でもよかった。だが親族がアイリーンさんだけのブライトウェル嬢としては、そちらの二人だと色々と誤解される恐れがある。
 
 母子家庭・父子家庭の新候補生がいないわけでもないが、リンチの娘という『傷』に付け込む輩がいないとも限らない。午餐会でアイリーンさんだけでは対処できない事態も想定されるから、その場では俺が国防委員会所属徽章と中佐の階級章で黙らせる。

 そして士官学校内部では現役将官の娘であるアントニナに『保護者』となってもらう。アントニナは情報分析科でブライトウェル嬢は戦略研究科と、学科は違うから正直どこまで守れるかは分からない。だが正義感の強さでは折り紙付きのアントニナ(現役少将の娘)と、その親友で嬢とも面識のあるフレデリカ(現役中将の娘)の二人がカバーすれば、ある程度は安全が確保できる。はずだ。もっとも女性士官候補生のいじめなど、相手が新兵とはいえ、前線でのエリミネーションマッチで一個分隊(一〇人)ぶちのめしたブライトウェル嬢にとってみれば、何ら恐れるものではないだろうが。

「フレデリカの同級生で知人なんでしょ? だったらフレデリカに任せればいいじゃない。なんで僕がやらなきゃいけないんだよ」
「アントニナ、お前、またグリーンヒル候補生と喧嘩しているのか?」
「空戦戦技と射撃技術では負けてない」

 つまりはそれ以外では負けているわけで、これまた機嫌の時期を間違えたかもしれない。もっともフレデリカ=グリーンヒルの卒業席次は『次席』だから、勝つ為には『首席』しかないわけだ。俺でもできたんだから、アントニナもできないわけはないと思うが。

「ともかく学科が違うから僕はまだ会ったことはないけど、そのリンチ少将の娘さんが不当な虐めとかに遭っていたら、フォローすればいいんだね?」
「士官学校内部で、俺が信頼して頼めるのはアントニナしかいないからな」
「タダではやらないよ?」
「……正直やりたくはないが、ヤン=ウェンリーのサイン色紙二枚でどうだ?」

 急に世知辛くなったアントニナにむけて俺が指を二本立てると、アントニナは顎に指をあててしばらく考え込んだ後、まだ幼い頃よく見せたいたずらっ子な視線を向けて応えた。

「……一枚はフレデリカ宛だね。そっちには『フレデリカさん、士官学校でも頑張ってください』と追記しておいて、たぶん興奮して鼻血を出すと思う。僕の分にはヤン少佐のサインに加えてヴィク兄ちゃんのサインと、兄ちゃんの知る人の中で一番偉いと思う人のサインを併記した色紙が欲しい」
「偉い人って、そんなのお前、一番はグレゴリー叔父さんに決まってるだろ」
「父さんじゃない人で」
「じゃあ、ビュコック司令官閣下でいいか?」
「ビュコックお爺さんのサインは、ジュニアスクールの
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