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冥王来訪
第三部 1979年
姿なき陰謀
隠然たる力 その4
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変化が必要な時が来たのだよ……」
 老人の言葉は、この時代にあっては非常に危険視される物であった。
米ソの二大国は、かつての帝政ドイツや第三帝国の事を心より畏れた。
 再びビスマルクやヒトラーのような傑物が現れれば、ドイツは一つにまとまる。
そして、我らの前に立ち塞がるであろう……
 畏れを抱いたのは、米ソばかりではない。
第一次大戦で数多くの成年人口を失ったフランスや、イギリスも同じであった。
ドイツ再統一という老人の言葉は、彼らから危険視されるのには十分だった。
 
 ここで、史実の世界はどうであったかを、簡単に振り返ってみたい。
英仏が、統一ドイツに対してどう考えていたかを、である。
 先ごろ公開された、1990年のフランス政府の外交電報によれば。
1990年当時の首相だったサッチャーは、同年3月、フランスの駐英大使にこう語ったとされる。
「フランスと英国は、手を取り合って新しいドイツの脅威に向かうべきだ」
そして、こうも述べたともいう。
「ヘルムート・コールは、別人になってしまった。
彼は、もはや自分というものを知らない。
彼は自分を『マスター』と勘違いし、支配者(マスター)であるかのように振る舞い始めている」

 またサッチャーは、敵国ソ連のゴルバチョフに対しても、次のように語った。
当時のゴルバチョフの立場は、東独にかける費用がソ連経済を圧迫していたので、統一ドイツを容認していた。
「英国も西欧もドイツの再統一を望んではいない。
戦後の勢力地図が変わってしまうことは、容認できない。
そんなことが起こったら、国際社会全体の安定が損なわれてしまうし、我々の安全保障を危うくする可能性がある」
サッチャーは、敵国ソ連をして西ドイツの勢力拡大を阻止しようとさえ企んでいたのだ。
 
 フランスのミッテランも同じであった。
ミッテランは、1990年1月にパリで行われた夕食会で、サッチャーに次のように漏らしたとされる。
「統一ドイツは、アドルフ・ヒトラー以上の力を持つかもしれない」
後に、ミッテランは、自分の側近をソ連に派遣し、ソ連の統一ドイツに対する姿勢を非難するほどであった。
 統一ドイツを阻止できなかったことを反省してであろう。
ミッテランは、自分の最側近を欧州復興開発銀行総裁の地位に潜り込ませ、東欧の経済を牛耳ろうとした。
 
 視点を再び、異星起源種が暴れまわる世界に移したい。
我々の世界と違う歴史を進む、この異世界でも英仏の態度は同様であった。
 この異界では、先次大戦において連合国は、ベルリンに4発の原子爆弾を投下した。
どのような理由かは、実は不明である。
 本来の原爆投下予定であった日本が、1944年に米国との講和条約を結んだため、作戦が中止になった。
このままでは、新
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