第三部 1979年
姿なき陰謀
隠然たる力 その4
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、フランスの5032万、イタリアの5317万や英国の5553万とほぼ同数か、それ以上であった。
統一ドイツの出現は、欧州の各国間の均衡を崩しかねない。
西欧諸国やソ連、或いは東欧と足並みをそろえて、ドイツの影響力を抑えてきた政策が水泡に帰してしまう。
そんな懸念を、首相に擁かせる様な、内容の話でもあった。
白銀も、首相の警戒心をうまく利用した。
西ドイツの対マサキ工作を実態以上に大きく説明し、彼の関心を誘ったのだ。
キルケの祖父・シュタインホフ将軍と西ドイツ軍が企んだ計画などを、針小棒大に話した
マサキは、罠にはめられて、シュタインホフ将軍の孫娘との結婚の間際まで行ったように伝えたりもした。
首相は、一頻り思案した後、ダッソーとサジェムの関係者を白銀に引き合わすことを約束してくれた。
かくして、マサキは労せずして、フランスの軍産複合体との関係を持つこととなったのだ。
一方、その頃。
西ドイツの連邦情報局では、なにやら秘密の会合が開かれていた。
「いいかね、我らの目的は一つなんだ、それ以上の事を望むんじゃない。
目的を遂げたら、対象者との関係をうまく持続させるんだ。
どんな手段を用いてもいいが、派出所に駆け込まれるような事は避けろ。
そうさせないのが、腕の見せ所だな」
「長官……」
20代後半と思われる最年少者のユングが、先ほどから話し続ける上品な顔立ちの四十がらみの男の言葉を遮った。
「なんだ?」
「我々の仕事は、そこで終わりですか」
「おそらくな」
そこに、英国留学中のヤウクと接触したバルク大尉が駆け込んできた。
「副長のヨーク・ヤウクにあって参りました」
「感触は……」
「上手く行きそうです」
「では、今日の会合は解散だ」
首相府外局の情報局を監督する首相府長官(官房長官に相当)は、間もなく情報局を後にする。
ボンの情報局を出た車は、そのままケルンに向かい、郊外にある植物園へと入っていった。
長官は、その植物園で待っていた男と、野外にある庭園を歩きながら、密議を交わしていた。
その男は、連邦軍や情報関係者から閣下と呼ばれている老人で、旧国防軍の高級将校だった。
「そうか……
シュトラハヴィッツの一派と同盟を……行くところまで行くかね!!」
「はい……」
老人は、ホンブルグに漆黒のローデンコートという春先には似合わない格好であった。
「そうか……」
老人は天を仰いだ。
「諜報の世界だけではなく……このドイツ民族が再び動く時が来たのかもしれない」
長官は、男の言葉に驚きと焦りの色を見せる。
「ドイツ民族が……」
「強く大きくなれば、前に立ち塞がる壁も、また大きく、強靭になる。
もう逃げて、許してもらえる小国ではない……
このドイツにも、大きな
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