第三部 1979年
姿なき陰謀
隠然たる力 その3
[11/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の戦術機に改良の余地があると考えて、手を入れているのですが……
どうも今一つなのです。
もしかして、ソフトウエアに重大な謎が……」
半ば疑うように、男は涼宮の顔を、やや暫し見まもっていた。
突然、声を上ずらせて、身を前へにじり寄せた。
「どこで、今回の件をお聴きなさった」
「先日、マンハッタン界隈であった国際会合で、小耳に……」
博士は、涼宮のその言葉を聞いた瞬間、持っていたウイスキーのグラスを落とした。
「では、スプレイ博士、我々の情報解析に協力してくれますな」
「とてもとても、私には荷が勝ちすぎます。
それに、米空軍からの契約を抱えていますし……」
スプレイ博士の断りの言葉を聞いた涼宮は、とたんに困惑の色を示した。
「じゃあ、誰が良いのですか、優秀な方を紹介してくれませんか」
博士は、新しいグラスに注いだロック割のウイスキーを呷る。
しばし思案した後、重い口を開いた。
「イタリアの、ジアコーザ博士。
ミラ・ブリッジス女史は……彼女は、この前、グラナンから寿退社したか……
それに、もう一人、ソ連のアントン・スフォーニ……
あ、ソ連は、対象外でしたな……」
言葉を切ると、男はタバコに火をつけた。
「となると、残る一人は、グラナンのフランク・ハイネマン」
「な!」
涼宮は、人形のように立ち尽くした。
ハイネマン博士といえば、戦術機を一切知らない涼宮でも、知っているほどの著名人。
例の一件で、篁祐唯中尉とミラ・ブリッジスを巡って、鍔迫り合いを演じた人物と聞き及んでいる。
日本政府や各種メーカーも、直言を憚らない、彼の事を嫌がるであろう。
それに、マサキが、どう思うかだ。
男女の三角関係を非常に嫌うほど、女性関係に潔癖で、清廉な人物とも聞く。
正直なところ、涼宮は、気が重かった。
スプレイ博士と会った涼宮は、詳しい事情をマサキたちに話した。
「ジアコーザ博士は、フィアット自動車お抱えの設計技師です。
自動車開発の技術部長を務めてらっしゃりますから、急な依頼は無理でしょう。
篁夫人のミラさんは、いま臨月でお答えできる状態じゃありません」
マサキが、眉を顰めた。
射るような視線で、涼宮の顔を見つめる。
「となると、技術者は一人しかいません。
グラナンのフランク・ハイネマン……」
途端に、マサキは嚇怒の色を示した。
彼は、ハイネマンという人物を一語の下に否定した。
「駄目だ!
奴は、篁との件で、日本によからぬ感情をいだいている節している」
それまで、黙っていた白銀が初めて言葉を出した。
マサキの顔色を、うかがうような口調だった。
「しかしですがぁ、木原先生。
色恋沙汰は、後からいくらでも決着をつけることが出来ます。
西ドイツ側に
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ