第三部 1979年
姿なき陰謀
権謀術数 その2
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ゲンの本音だった。
「このチャイナレイクの基地は、ミサイル関連も研究対象なんです。
フェニックスミサイルの前には、AIM−9サイドワインダーなどの試験も行っていたのですよ」
時代は幾分後になるが、レイセオンが作ったAGM−88高速レーダー破壊用空対地ミサイルも、このチャイナレイクの基地で研究されたものであった。
1972年の第一次戦略兵器制限条約調印直後に、当時の大統領補佐官ヘンリー・キッシンジャーの提案で開始された新たな核運搬手段しての巡航ミサイル。
後のトマホーク巡航ミサイルや長距離空対地ミサイルSLAM‐ERの開発研究も、1970年代後半から1980年代にかけ、同基地で実施された。
「新型の空中発射型の巡航ミサイルが、戦術機に搭載されれば、今よりずっとBETA戦は楽になりますよ」
「まさか」
ユルゲンには、俄に信じられない容子もあった。
クゼ大尉の答えは、弾んでいた。
「貴殿が持ち込んだゼオライマーに関する方向書を丹念に調べれば、大火力をもってして、光線級さえ排除すれば、BETA戦は簡単なように思えるのです。
自分の少ない経験で何ですが、防空駆逐艦や対空陣地に比べれば、光線級の怖いところは標準射が正確なところぐらいです。
水平線の陰に隠れて、対象物と認識されない地点から、ホーミング誘導式の多弾頭ミサイルで攻撃すれば、勝てると自分は考えております。
今、陸軍のレッドストーン実験場で開発中のAGM-114対地ミサイルも、その候補になると思っております。
合衆国と国防総省の方針としては、誘導弾による視界外からの攻撃に重点を置きつつあります。
その証拠に、第31航空試験評価飛行隊の予算もフェニックスミサイルの開発がなければ、減らされる予定でした」
「なにっ、米国政府が」
愕として……。
「あの米国政府が、軍事予算の縮小を?」
半信半疑、ユルゲンは茫とする。
クゼ大尉はユルゲンの関心を引きたい一心で打ち明けた。
去年の暮れごろ、米政府の一機関・ロスアラモス研究所は、G元素の抽出に成功した。
それ以後、副大統領に近い元大統領補佐官のヘンリー・キッシンジャーは、核戦力の代替策として新型爆弾の開発に軍事予算の大部分を移すように提言を入れた。
米軍全体としては、恐ろしい彼の執念につきまとわれていることを、告げて、
「キッシンジャー前国務長官は、ニクソン時代に国家安全保障会議を牛耳っていた人物ですからね。
支那に極秘訪問して、周首相と二度も直談判したほどの方です。
我々の様な一介の軍人が正論で諫めた所でも、届きはしません。
正に蟷螂の斧です」
ユルゲンは、キッシンジャーの事は米国に来る以前からは知っていたが、それほどまでに各界に影響
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