四十二 接触
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不意に強風が吹き、カーテンが大きくめくれ上がった。窓を閉めに立ち上がったヒアシの背を、ヒザシの声が追い駆ける。
「そういえば……目が覚める直前、誰かに話しかけられた気がするんだ…」
薬の副作用で襲ってくる睡魔に身を任せながら、夢現に呟く。
「借りは返した、とか…なんとか…」
うつらうつらとする弟の寝惚け声に苦笑しつつ、ヒアシは窓を閉めた。外の木が大きく軋み、木の葉時雨を降らしている。散りゆく葉の軌跡を目で追うヒアシの耳に、ヒザシの掠れた声が届いた。
「それに…一瞬だけ……」
翳む意識の中で唐突に話を断ち切ったヒザシ。寝入った彼にシーツを掛け直してから、ヒアシは病室を後にした。専属の医師に弟を任せ、宗家の仕事である書類を手に廊下を歩く。
最後に告げたヒザシの話が夢か現実かをはかりかねながら。
「…一瞬だけ、金色が見えたんだ…」
足音の持ち主。
砂忍の一人、我愛羅とカンクロウの姉であるテマリは階段上から木ノ葉の忍びを見下ろした。
「お前か…。次の私の対戦相手は」
見下すような冷たい視線に、シカマルが眉を顰める。
シカマル同様、次試合に呼ばれたテマリ。バッタリ出会った双方は互いに相手を睨みつけた。戦意が込められた視線は形となり、火花を散らす。
ゆっくりと階段を下りてきたテマリから目線を離さず、ナルとヒナタを庇うようにシカマルは身構えた。
一方、同じ段まで降りてきたテマリは、ナルの姿を目に留める。同じ風を扱う者としてナルに親近感を抱いていた彼女はおもむろに笑みを浮かべた。
「さっきの試合、なかなか見事だったね」
突然の褒め言葉に、ナルがきょとんとした。やがて歓喜がじわじわと彼女の心を満たしてくる。褒められ慣れていない彼女はテマリのたった一言の賛辞に瞳を輝かせた。
「ありがとだってばよ!テマリ姉ちゃん!!」
弾けるような笑顔を目の当たりにし、テマリは目を瞬かせた。まじまじと見遣る。大袈裟過ぎるほど喜んでいる彼女の様子を不思議に思うよりも前に、テマリは寸前のナルの言葉を心の中で反復した。
「…もう一度、さっきの言葉、言ってくれないか」
「?ありがとだってばよ?」
「違う。その次だ」
「…テマリ姉ちゃん?」
小首を傾げるナルの前で、じ〜ん…と感動する。きょうだいで一番上だというのに、弟達から一度たりとも『お姉ちゃん』と呼ばれた事の無いテマリはその一語を深く噛み締めた。
「もう一度」
「テマリ姉ちゃん」
「もう一度」
「テマリ姉ちゃん!!」
「……あ――…めんどくせーけど、早く対戦場向かわねえか」
止め処ない押し問答に終止符を打つ。ナルを階段上に追い遣ったシカマルを、テマリは恨めしげに睨んだ。
ヒナタに促され
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