第一章
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トドと兎
アイヌに伝わる話である。
ある時海神の妹が病に罹った、それを見て海神に仕える海の生きもの達はどうしたら彼女の病が治るのかと考えた。
「ここは薬だな」
「そうだな、かなり難しい病だが」
「薬を飲んで頂ければ治る」
「そうした病とのことだ」
「では万病に効く薬を手に入れよう」
「そうするとしよう」
こう話して彼等はそれぞれ万病に効く薬を探した、それはトドも同じでだ。
彼も探した、だがこれといって見付からずだ。
何処にあるのかと考え自分と親しい陸にいる狼に尋ねた。
「何かいい薬はないか」
「そう言われてもな」
狼は難しい顔で応えた。
「わしもな」
「これと言って知らぬか」
「難しいどんな病でも治す薬だな」
「万病に効くな」
「そうした薬か」
「うむ、実は肝がいいと聞いた」
トドは狼に話した。
「生きもののな、だが海神様のご家族はだ」
「肝は食されぬか」
「いや、肝は万病に効いてもな」
このことは事実だがというのだ。
「虫がいたりしてな」
「毒にもなるか」
「また身体の調子が悪い者の肝はな」
それはというと。
「これまたな」
「毒になるか」
「そう聞いた、だからな」
「肝はよくないか」
「それに北の方の白い熊だが」
トドはこの生きものの話もした。
「何でも精が強過ぎてな」
「その肝はか」
「喰らうと薬どころかな」
「毒になるか」
「精も強過ぎると毒になるらしい」
薬になるどころかというのだ。
「そうなるらしい、だからな」
「肝はか」
「わし等もな」
「取らぬか」
「そうなった、肝も難しい」
「ううむ、そういえばわしも祖母さんに言われた」
狼は真剣な顔で答えた。
「生きものの内臓、肝も含めて食う時はな」
「用心して食えとか」
「言われた、だからわしもな」
「肝はよくないか」
「そう聞いた」
「やはりそうか」
「それで話を戻すが」
狼はトドにあらためて話した。
「悪いがわしは知らん、しかし山で一番頭のいい兎ならだ」
「知っているか」
「そうかも知れん、兎と会って話を聞いてみるか」
「そうする、では紹介してくれ」
「それではな」
狼はトドの言葉に頷いてだった。
早速兎を呼んだ、トドは兎にことの次第を話してあらためて彼に知っているかと尋ねた。するとだった。
兎は頷いてだ、確かな声で話した。
「山菜だね」
「山菜か」
「そう、実は山菜は凄く身体によくてね」
それでというのだ。
「色々食べたら」
「万病に効くか」
「そうだよ、じゃあこれからね」
「山菜をくれるか」
「お前さん海の生きものだろ」
兎はトドのこのことを言った。
「だから山には行けない
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