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渦巻く滄海 紅き空 【下】
八十一 決壊
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マグマで足がグズグズに溶けるのが先だが、そこは【熔遁忍術】の使い手である老紫が上手く調整した。

どれだけ巨大であろうと巨体であろうと、動きを封じられた口寄せ動物など恐るるに足らず。
ましてや地表がマグマである為に【口寄せの術】を発動できない召喚主であるペイン畜生道も、もはや成すすべもない。
撤退しようにも足が固まっているので動くことも敵わない。

「詰みだのう」


血継限界【熔遁忍術】の使い手である老紫は、【口寄せの術】の使い手である畜生道に対して、赤い顎髭を撫で摩りながら呵々と哄笑する。

視界の端でもうひとりのペインである人間道のほうを確認すれば、こちらはやぐらが対処していた。






花のついた棍棒を使い、巧みな棒術で人間道の手を警戒する。
対象者の頭に手を当てることで記憶や情報を読み取る能力の特性上、戦闘には向かない人間道は防戦一方だ。
だが手で触れてしまえば、魂を抜き取って即死させられる故、接近してしまえば人間道の勝ちである。

一方、早々に相手の手が危険だと看破したやぐらは、人間道の手には触れないよう、あえて棒術を使って追い込んでいる。
だが人間道は突き出された棍棒に臆することなく、逆にその根元を掴んだ。引き合うようにして力を入れ、邪魔な棍棒を奪い取る。

得物を奪われたやぐらを見兼ねて、助力に向かおうとした老紫は、やぐら本人から助太刀無用の声を掛けられた。

「舐めるなよ、俺を誰だと思っている?」


無表情で魂を抜こうとやぐらの頭目掛けて手を伸ばす人間道。
得物を奪われたにもかからわず、やぐらは妙に不敵な笑みを見せた。

その瞬間、奪った棍棒の穂先に咲く大きな花の飾りから、ぶわり、と水の泡沫が咲き乱れる。

「生け捕りにするのもわけないさ──【水遁・水牢の術】!」



奪った得物の飾りかと思っていた花から発動した【水牢の術】。
それを至近距離で受けた人間道は、瞬く間に水の牢屋に閉じ込められた。
カラン、と水牢の外で落ちた棍棒がやぐらの足元へ転がってゆく。

「ただの飾りかと思ったか?残念。花には棘があるものだぜ」


やぐらは棒術で斬り結ぶようにして、その実、棒を媒介にしてチャクラを花に送っていたのだ。
つまり奪われる前提で棍棒を振り翳し、わざと隙を見せて得物をあえて人間道に奪わせたのである。

頃合いを見計らって花から術を発動させ、見事、ペイン人間道を囚われの身にした元水影は、奪い返した棍棒を拾い上げると前髪を掻き上げる。


そうして一見子どもの容貌である三尾の人柱力──橘やぐらは、外見に似合わない台詞を自信満々に言ってのけた。



「亀の甲より年の劫ってな。思い知ったか、若造」










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