暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第193話:愛と涙を宝石に
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危ネエ、ゾ……」
「ッ!!」

 こんな状況、こんな状態でも颯人は奏の事を想っているのだ。と言うより、最早彼の中に残っているのは奏への愛だけと言っても過言ではない。奏に対する愛が唯一今の彼の人間的な部分を保たせているのだ。
 彼の一途だが途方もなく強い愛に、奏も堪らず顔をクシャクシャにして涙を流しながら彼に近付きその顔を両手で包む様に掴んだ。

「しっかりしろ、負けるな颯人ッ! そんな自分の中に巣食ってる化け物なんかに負ける程、お前は弱くない筈だろッ! 頑張れ颯人ッ!」
「ア……アァ……! ア、グっ!? グ、ァァァァァッ!?」
「ッ!? 奏さんッ!?

 至近距離で奏の涙を流す顔を見たからか、颯人の顔に僅かだが理性が戻ったように見えた。だがそれも本当に束の間の事で、次の瞬間には再び獣の様な叫び声を上げ凶悪な爪の生えた手を奏に向け振り上げた。それに危機感を感じた響が思わず奏を突き飛ばし、彼女を守ると同時に振り下ろされた爪を自身が両手で受け止めた。

「響ッ!?」
「く、ぁっ!?……ぐっ、だ、大丈夫です……!」
「グルルルルッ!」
「は、颯人さん、自分を見失わないでッ! 奏さんも、私も皆も、颯人さんを待ってるんですよッ! 私、今日、誕生日なんですッ! 颯人さん、こういう所で手品するの大好きなんですよねッ! 私も皆も、勿論奏さんも、皆颯人さんが見せてくれる手品を楽しみにしてるんですッ! だから、戻ってきてください颯人さんッ!」
「グゥ、ア、ガァァァァァッ!?」

 響の懸命な説得が颯人の心に響く。それが関係しているのか、明らかに颯人が先程とは違う感じで苦しみ始めた。自身の内側で暴れるファントムと彼自身との戦いが激しくなっているのか、罅割れた所から漏れ出る魔力の光が明滅し始めた。

 その時、奏と響により一時的にこの場から遠ざけられていたレギオンファントムが、颯人の説得に集中して周囲への警戒が疎かになっていた響に襲い掛かる。

「邪魔だ、小娘ッ!」
「はっ!?」

 背後から聞こえてきたレギオンファントムの声に慌てて振り返るが、彼女が迎え撃つ態勢を整えるより先にレギオンファントムの振るう薙刀が彼女を捉える方が早かった。鋭い刃が彼女の体を切り裂き颯人から引き離す。

「うあぁぁぁぁぁっ!?」
「響ッ!?」
「ぐっ!? くぅ……ま、まだ、まだ……!」
「フンッ!」
「がっ?!」

 切り裂かれながらも立ち上がろうとする響だったが、そこにレギオンファントムからの追い打ちが放たれる。足を切り裂かれ、更にはその部分に赤い亀裂を作られ響の体はそこに縫い付けられてしまった。必死に足を動かそうとする響ではあったが、空間そのものを縫い付けるレギオンファントムの魔法から抜け出す事は難しく、魔法に対しては無力な彼女では何も
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