第98話:お引っ越し
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なのははそう言って再びグラスに口をつけた。
俺はデスクの上にあるウィスキーが入ったグラスを手に取ると、
椅子に腰を下ろした。
「そりゃよかった。しかし、今日はさすがに疲れたな」
「そうだね。でも、もとあった荷物が少なかったからまだましじゃないかな」
「ま、そうだな。ほとんど使ってなくて幸いだったってとこか・・・」
俺はそう言うと、椅子の背もたれに体重を預けて軽く背伸びをする。
それからしばらくは、俺もなのはも黙ったままそれぞれの酒を
ちびちびと飲む時間が続いた。
やがて、なのはがグラスを持ってベッドから立ち上がり窓の方に向かう。
なのはは窓の外の景色にじっと見入っているようだった。
俺は椅子から立ち上がると、なのはの横に立ち腰に手をまわして抱き寄せる。
なのはは小さく声をあげて一瞬身を離そうとするが、
すぐに力を抜いて、俺に身を預けるようにする。
「どうしたの? ゲオルグくん」
「ん? やっと2人きりになれたな、と思ってさ」
「ふふっ、そうだね・・・」
なのはは俺の顔を見上げて微笑む。
「きれいな景色だね。こんなにいい景色なのにほとんど住んでないなんて、
もったいないよ」
「そうかもしれないけど、仕事上の都合だからな・・・仕方ないだろ」
「そうだけどさ、やっぱりもったいないよ。こんなにきれいな夜景なのに」
そう言ってなのははまた窓の外の景色に目を向ける。
そんななのはの横顔を見ていると愛おしさがわきあがってきた。
「ねえ、ゲオルグくん」
「ん?なんだ?」
「ありがとね。ヴィヴィオのためにここまでしてくれて」
「何言ってんだ。ヴィヴィオは俺にとっても大事な子だよ。
俺自身がヴィヴィオと一緒にいたいからこうしたんだ」
「うん、わかってるよ。でも、わたしにとってはありがたいことだもん。
やっぱり、ありがとうって言いたいな」
「そりゃどうも」
俺が肩をすくめながらそう言うと、なのはは小さく笑った。
(俺の人生でこんなに暖かい時間って子供の時以来だよな・・・)
思い起こせば、管理局の魔導師になって以来、
常在戦場を地で行く人生だった気がする。
まさか、自分の思い人とこんなにゆったりとした時間を過ごせる日がくるとは
夢にも思っていなかった。
こんな日がずっと続けばいい・・・。そんな気持ちになれたのはやはり
俺の傍らに居る女性のおかげだと思うのだ。
(今、渡すか・・・)
俺はなのはから離れると、デスクの引き出しを開けその中にある
小箱を取り出した。
「ゲオルグくん?」
訝しげに俺を見るなのはの方に振り返ると、
俺はなのはに向かって小箱を差し出した。
「これ、受け取ってくれ
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