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ヤクザな父が死んで
第二章
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「そうしたお仕事でね」
「やっていってるの」
「昔は建築もヤクザ屋さんが多かったから」
 そうした世界だったというのだ。
「お父さんもだったけれど」
「今は違うわ」
「入れ墨していても?」
「そうよ。ただ別居してるのはあんたが言われるし
「ヤクザ屋さんの娘だって」
「それで一人暮らししてるの」
「私のことを考えて」
「そうよ」
 その通りだというのだ。
「組に入ってから建築だけで麻薬とか喧嘩とかはしてないけれど。元々そうした組だし」
「ヤクザ屋さんでもなの」
「建築でね、それで新法でね」
 この法律でというのだ。
「もう違うのよ」
「そうだったの」
「カタギよ、ただ元なのは事実よ」
 このことはというのだ。
「あんたが嫌うのも当然よ。けれど今は違って」
「悪いことはしてないの」
「そうした組よ。荒っぽいことはしていたけれど」
 それでもというのだ。
「ヤクザ屋さんも色々で」
「そうした人もいるの」
「そうよ。それでもあんたがそう言うなら」
「ええ、やっぱり元でもね」
 陽子は毅然として言った。
「ヤクザ屋さんだから」
「荒っぽいことはしていたから」
「縁切るわ。けれどお母さんどうしてヤクザ屋さんと結婚したのよ」
「お母さんが居酒屋で働いていてその時常連さんで何かとよくしてくれてね」
「それでなの」
「好きになって告白されてよ」
「結婚したの」
「そうよ、けれどお父さん浮気もしないし」
 愛人等もおらずというのだ。
「暴力も振るわないわよ」
「お家にもお金入れてくれて」
「そのことは忘れないでね。ただ娘のあんたがそう言うし」
 だからだというのだ。
「これからは二人で暮らしましょう」
「もういいわ、確かにまだ許せないけれど」
 それでもとだ、陽子は母に言った。
「そうした人とわかったら」
「縁は切らないのね」
「そうするわ」
 こう言ってだった。
 陽子は縁を切ることは止めた、そして就職して仕事をした。元々大学に行くつもりはなかったので仕事はした。
 それから十年後父は癌で死んだ、その時までも陽子は父とまともに会わず話もしなかった。だが葬式はしてだ。
 四十九日が終わってからだ、母に言った。
「ヤクザ屋さんだったことはやっぱりね」
「許せないわね」
「今もね。けれどお金入れて浮気も暴力もない」
「そうした人だったことはわかってくれるわね」
「事実だからね」
 それでというのだ。
「受け入れるわ」
「だからお葬式もしたのね」
「ええ、今は冥福を祈るわ」
 こう言うのだった、そしてだった。
 陽子は心優しい人と結婚して息子を持って母と同居した。やがて息子に彼の祖父のことを聞かれるとだった。
 ヤクザ屋さんだったけれど悪い人でなかった、嫌い
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