第一章
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ヤクザな父が死んで
最低の父親とだ、草薙陽子は父の話になると顔を顰めさせてよく言った。黒く丸い目と細長い眉で面長で口は赤く大きい。黒髪を長く伸ばし一五五位の背で脚が奇麗だ。
「ヤクザ屋さんでね」
「えっ、ヤクザ屋さん!?」
「そうだったの」
「陽子ちゃんのお父さんって」
「もう悪いことしてるなんてね」
それはというのだ。
「絶対にそうだしね、お家にも滅多に帰ってこないで」
「愛人さんのところにいるとか」
「そんな風なのね」
「何かあるあるよね、ヤクザ屋さんって」
「悪いことして愛人さんもいて」
「もう何年も話してないわ、お母さんは何も言わないけれど」
それでもというのだ。
「最低よ、早く死んで欲しいわ」
「親がヤクザ屋さんだと大変ね」
「それ言われることもある?」
「やっぱり」
「隠してないし気にしてない私は私だから」
自分ではそうだからだというのだ。
「幾ら言ってもいいけれど最低なのは事実だしね」
「そういうことね」
「ただ陽子ちゃんが陽子ちゃんなのは事実ね」
「親御さんは関係ないわね」
「学校行けてお母さんが一緒だからいいわ」
こう言ってだ。
陽子は家に滅多に帰ってこない父親のことを常に最低だと言って憎んでもいた。それで高一郎という父が家に帰ってもだった。
口も利かず無視していた、母の桜子娘に異伝をそのまま受け継がせている彼女はそんな娘に言うのだった。
「あんた今高校生だけれどそこまでね」
「あいつがお金出してっていうの」
「ちゃんと育ててくれてるから」
「悪いことして人苦しめて稼いだお金でしょ」
ヤクザだからだとだ、娘は母に言った。
「どうせ」
「ヤクザ屋さんなのは事実だけれど」
「そんなお金で育ててもらってもよ」
「感謝しないのね」
「ヤクザはヤクザよ、お母さんも何で結婚して」
そうしてと母に言った。
「離婚しないのよ」
「それはね」
「何でよ。ヤクザ屋さんなのに」
「今のあんたに行ってもわからないかもね」
「わかるわよ、ヤクザ屋さんなんかいなくなればいいし」
そうしてと言うのだった。
「あいつもよ、早くよ」
「死ねばいいのね」
「ヤクザ屋さんは皆ね」
「それで口も利かないのね」
「私が就職したらもうあいつと縁を切って」
そうしてというのだ。
「二人で暮らそう、そうしましょう」
「そうは言っても」
「そうしましょう」
母に言わせなかったが自分の気持ちを押し付けていることは気付かなかった。そして実際に高校を卒業するとだ。
陽子は進学ではなく就職を選んでだった。
「これであいつと縁を切れるから」
「あんたが働いてお金稼いで」
「ええ、もうあいつと離れてね」
「二人で暮らすのね
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