第一章
[2]次話
イタリア少女の親御さん達
ルクレィツア=ゴンガーザ、イタリアから日本に引っ越してきて自分が担任を務めるクラスに来てだった。
中村秋生、一七〇位の痩せた気弱そうな顔立ちで細面で眼鏡をかけた黒髪を真ん中で分けた小学生の生徒達からは公平で優しいが何処か頼りないと言われている彼は今職員室で仰天してこんなことを言った。
「シチリア生まれというと」
「マフィアですね」
教頭の青島勝弘が応えた、髪の毛が見事に前からなくなっていて四角く蛙の様な顔立ちをしている小柄で腹が出た初老の男性だ。
「もう」
「はい、まさか」
「いやいや、若し親御さんがマフィアでも」
「その娘には関係ないですね」
「わかってるじゃないですか」
「それはそうですが」
中村は教頭にそれでもと返した。
「あの、問題は」
「親御さんがマフィアで」
「何か言ってきたら」
担任である自分にというのだ。
「そう思いますと」
「怖いですか」
「マフィアは日本のヤクザ屋さんより怖いですね」
「生きたまま豚の餌にされたりするそうです」
教頭は素っ気なく答えた。
「アメリカでも有名ですね」
「マフィアは」
「それでシチリアといいますと」
「マフィアの本場ですね」
「自警団や密輸組織がはじまりで」
そうした組織が暴力を背景に裏社会を支配する様になったのだ。
「ナポリはカモラですが表の社会にも何かとです」
「一枚?んでいて何かあると」
「出て来ます」
「そんな人が親だと」
「いやいや、シチリアでもですよ」
教頭はここでは笑って話した。
「マフィアとは限りませんよ」
「そうですか」
「そこは家庭訪問でも確かめられますね」
「今度ありますね」
「ではその時に」
「はい、お話します」
その娘の両親と、とだ。こう教頭と話してだ。
中村はルクレィツアの自宅の家庭訪問に赴いた、そこは普通の日本のマンションで内装もそうであった、彼女の両親は白人それもラテン系の外見であったが。
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