暁 〜小説投稿サイト〜
終末世界デ最高ノ結末ヲ
第1章 守らなければならないものがある
4話「治癒魔法」
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さん、お疲れ様です」
「今は何を? 誰が指示してる」
「今は襲撃で犠牲になった戦闘員たちの体を奥の方に寄せて、この辺りの血の掃除をしてます。奥に"リンファさん"が来てくれていて……リンファさんの指示で動いてます」

 言われて廊下の奥の方を見てみると、陰になっていて見にくいがたくさんの死体が並んでいることに気付く。そして、その中で……ゆらりと何かが動いた。

(……うわ、ゾンビ!?)

 ……まあ、反射的にそう思いはしたけど、ゾンビではないことは分かっている。
 ゆらりと動いた"それ"は人影だ。うつ伏せに倒れていたのか、腕で体を支えて上体を起こしているように見える。体つきは倒れている戦闘員たちよりかなり小さい。女性、もしくは少年少女。
 起き上がったそれを見たポーランが、働いていた戦闘員たちに「戻っていいぞー」と声をかけながら人影に近付いていく。私もその後を追って廊下を進む。
 戦闘員たちは皆ポーランの行動の意図を理解しているため、意を唱えたり何か聞き返したりすることなく、軽く返事をしてほぅ、と息を吐く。大きく伸びをしてから顔見知り同士は集まって、そうじゃない者たちはそれぞれで自分の持ち場に戻り始めたので、数分もせずこの場は静まり返った。

 さて。一歩、また一歩。こちらが歩みを進めていく間に。
 人影は、眠そうに目を擦り。大きく伸びをしようとして。あまりに凝り固まりすぎて痛んだのか、また地面に蹲って。
 
 "彼女"は私とポーランの存在に気付く。

「ぽーらぁあん……新しい飲み物、持ってきたわよねえぇ……」

 丁寧に肩あたりの高さで切り揃えられた黒髪。髪の内側は彼女の瞳と同じビビットピンクに、ムラ一つなく染められている。左側の髪を耳にかけ、花の髪飾りを使って可愛らしく飾っており、これだけ見たら"容姿にきちんと気を遣っている女の子"という印象を受けるだろう。
 ただ、彼女には重い"障害"がある。そのせいで顔は酷くやつれており、唇も皮が剥けてボロボロ。体も骨がくっきりと浮かんでしまうほどに痩せ細っている。

「ったりまえよ。今日は随分と長丁場になりそうだしな、致死量ギリギリまで用意してもらったぞ。くれぐれも隠し持ってるやつ飲んだりするなよ、本当にギリギリらしいから」
「えぇー? ムリかもぉ……」

 彼女こそ、先ほど戦闘員との会話の中で名前が挙がったリンファ本人だ。
 生まれた時からの英才教育の賜物か、ただ単純にリンファが生まれ持った才能か。この終末世界でまともに教育を受けられなかった若者たちとは天地の差があると言っていいほどに彼女は頭が良く、シティで最年少の医者をやっている。厄災が起こる前から医者をやっている者は当然必要な学習や試験を超えて医者の免許を持っているが、厄災が起こってから免許を取ることができ
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