第97話 見えて見えないもの
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ら賛成ですねぇ……」
溜息交じりにピデを手に取り齧りつくヤンが応えるが、
「そんなことあり得るわけないだろう。帝国の連中は、何時でも我々を滅ぼそうとしている。戦争が終わるのは奴らが滅びるか、我々が滅びているか、そのどちらかだ」
もう遠慮はいらないとばかりに、一人で勝手に注文したキョフテにフォークを刺しつつ、舌鋒鋭くワイドボーンが応える。その姿にラップは肩を竦めて視線を逸らしているし、(現時点で)政治も軍事も専門外なジェシカも苦笑いを浮かべている。
「じゃあ、ワイドボーン。どうやったらこの戦争は終わらせることができると思う?」
コイツの真っ白なYシャツに撥ねたトマトソースが付いたのを確認した俺が挑発気味に話を振ると、ワイドボーンは口先まで届いていたキョフテを皿に戻してから応えてくる。
「イゼルローンです。イゼルローンを陥落させることで、帝国軍は回廊より同盟側の領域における軍事作戦を展開することは出来なくなります」
「イゼルローン要塞は難攻不落だ。これまでに挑戦四回、いずれも失敗している。ついこの前も七〇万人もの犠牲者を出した。動員する戦力がどれだけ大きかろうと、あの要塞は陥落させることは出来ない」
「しかしボロディン先輩。策源地を叩かない限り、戦争は終わりませんが?」
「ではこのままダラダラと三年に一回程度のペースで、一〇〇万人近い犠牲を出すイベントを続けるのかい? もちろんイゼルローンに正面展開ができるよう周辺星域を無力化する軍事行動を含めてだ」
「……そこまでおっしゃるなら先輩のお考えを聞きたいですね」
ここまでヤンに向かっていたワイドボーンの鋭気が俺に進路変更される。コイツの挑発的な視線を浴びるのは久しぶりだが、職場で向けられるエベンスのシラケたモノや、チェン秘書官の妖しげなモノに比べれば、嫌味であってもハッキリすっきりしてはるかに心地がいい。別にマゾというわけではないが。
「あまりにもイゼルローン要塞が難攻不落ゆえに、我々同盟軍はその戦略的意義を軍事要塞としての価値にのみ注視しすぎている。同盟帝国両領域のチョークポイントという絶妙の位置にあるという点も含めてだ」
「そうです。ですから、我々は要塞を陥落させる必要が……」
「なぜイゼルローン要塞を『陥落』させる必要があるんだ?」
「え? ですが……」
「策源地を無力化するのは、何も策源地『本体』を無力化するのとは同値ではない。その戦略的価値を失わせることでも達成できる。我々は帝国軍と戦っているのであって何もイゼルローンと戦争をしているんじゃない」
イゼルローン要塞自身はほぼ永久要塞。普通の地上軍の基地とは違い、補給線を断ったところで無力化は出来ない。だが、基本的に要塞自体の持っている戦闘能力は、あくまでもアルテナ星系の一部領域だけに過ぎな
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