第3部
ムオル〜バハラタ
殺人鬼の正体
[7/7]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
振る舞いますよ」
「いえ、タニアが無事なのがわかったから、これでお暇し……」
「わかった。ありがたく頂戴する」
私の言葉を遮ったユウリは、遠慮と言う概念を町長のところに置いてきたようで、図々しくも部屋に上がり込んでしまった。
「ユウリちゃん、町長さんに変な気を遣ったから、その反動で傍若無人になったみたいだね☆」
「いや、『だね☆』じゃないでしょ」
かといってパーティーのリーダーが動かない以上、こちらも無下に断ることも出来ない。申し訳ないと思いながらも、私たちもお言葉に甘えることにした。
結局たくさんの食事を振る舞われ、お腹一杯になった。このまま泊まっていきたいと言う欲に必死に耐えた私たちは、眠い目を擦りながら宿に戻ることにした。
タニアたちに別れを告げ、宿へと向かう途中、私はぼんやりとタニアとグプタさんのことを思い出していた。
あんなに幸せそうな二人と会えて、本当に良かった。それに結婚して子供まで出来るなんて、幸せの絶頂ではないか。
実家では幼い弟妹の面倒をずっと見てきたから、子どもと触れ合うのは好きだ。もしタニアたちの子供が生まれたら、また遊びに行こうかな。ああでも、待ちきれないな。なんて願望が抑えられなくて、つい口に出てしまう。
「あーあ、子供欲しいなあ……」
ずさああっっ!!
突然、目の前を歩いていたユウリがスライディングしたではないか。その奇妙な行動に、私は慌てて駆け寄った。
「どうしたの、ユウリ?」
「お……お前が変なことを言うからだ……」
「ご、ごめん。早くタニアたちの子供を見たいなって思ったら、なんか変なこと口走っちゃったみたい。別に自分の子供が欲しいとか言ってるわけじゃないからね?」
「もういい。それ以上言うな」
ユウリはすっくと立ち上がり、私に背を向けて歩きだした。すると私の後ろでクスクス笑っている声が聞こえた。
「やーだユウリちゃん☆ もしかしてミオちんが結婚する想像でもしちゃった?」
「黙れザルウサギ!!」
顔を真っ赤にして怒りながらシーラを殴ろうとするユウリ。本気ではない彼の攻撃を、シーラはからかうようにひらりひらりとかわしていく。その光景が珍しくて、ついナギと二人で眺めてしまう。
「なあ、あの二人あんな仲良かったっけ?」
「さあ……」
事情がさっぱり飲み込めないナギと私を尻目に、二人は宿に戻るまでの間、ずっと追いかけっこをしたのであった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ