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俺様勇者と武闘家日記
第3部
ムオル〜バハラタ
殺人鬼の正体
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走ったのは余談である。
 次に向かったのはマーリーさん……いや、グプタさんのお店だ。時間的にはまだ店はやっているはずだが、店舗のカウンターは閉まっている。今日は休業なのかと、裏口に回り込んで朝訪ねた扉の前でノックする。すると、出てきたのは今回もマーリーさんだった。
「おお、勇者様ではないか!! して、成果は?」
「ふん、俺たちにかかれば雑魚同然だったな」
「なんと、さすがは勇者様!!」
 チラリと横を見ると、なにか言いたげなナギであったが、それよりも私は夕べから姿を見せないタニアの方が気になった。
「あの、マーリーさん。タニアの具合はどうだったんですか?」
「!! ……実はな……」
 マーリーさんの深刻な表情に、私は肝が冷える思いがした。まさか、あれからタニアは……。
「医者に診てもらったら、なんとタニアの奴、妊娠しておったそうじゃ!!」
 ……………………。
『ええええぇぇぇぇっっっっ!!??』
 多分、ここ最近で一番驚いた出来事だと思う。何しろあのユウリですら唖然としていた程だ。
「わあ〜〜っ、おめでとう!!」
 相変わらず切り替えの早いシーラが、マーリーさんに祝福の言葉を伝える。
「じゃあ、顔色が悪かったり、フラフラしてたのも、妊娠してたからってこと?」
「うむ。わしもてっきり店の後継問題でバタバタしてたからかと思ったが、違ったようじゃ」
 ひょっとして、タニアの身体が痩せ細っていたのも、赤ちゃんに栄養が行ってたからなのかもしれない。
「皆さん、ご心配おかけしました」
 私たちの声を聞いたからか、タニアがグプタさんとともに部屋の奥から現れた。昨日より顔色はいいが、やはり少し身体がふらついている。そんな彼女を、グプタさんは隣で支えていた。
「タニア、体調は大丈夫?」
「ええ。たくさん休んだから、すっかり良くなったわ」
 そう言うとタニアはにっこりと笑った。
「ホント、無理しないでね。うちのお母さんもそうだったけど、このくらいの時期が一番危険なんだから」
「ありがとう。実を言うと、ちょっと無理してたみたい。おじいちゃんのこともあったし、カンダタのことも気になっちゃって。精神的に落ち込んでたのかも」
「あ、そうだ。結局殺人鬼はカンダタとは関係ない、ただの魔物だったんだよ」
「え、そうなんですか?」
 タニアの代わりに反応したのは、グプタさんだった。彼ももしかしたら、カンダタに逃げられた責任を未だに引きずっていたのかもしれない。
「取り敢えず、もう町の人が襲われることはないと思うから、安心していーよ♪」
「そうか……。それなら良かったです」
 あっけらかんと話すシーラに毒気を抜かれたのか、安堵する二人。
「皆さん、お礼といってはなんですが、食事でも一緒にどうです? 朝早く採れたばかりの黒胡椒料理を
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