第3部
ムオル〜バハラタ
殺人鬼の正体
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あいつは飛び道具を持ってる」
そうだ、あいつの武器は斧だけではない。最初に放った太い針もいくつ持っているのかわからない。
『くっ……。人間ごときが……』
殺人鬼はいまだ起き上がることが出来ずにいる。だが次の瞬間、木の根もとで横たわる殺人鬼の腕が動いたかと思うと、一瞬何かが光るのが見えた。
「危ない!!」
「スカラ!!」
私の声とほぼ同時に、シーラが防御力強化の呪文を唱える。その間に駆けつけたナギがシーラの手を引っ張りその場から離れた。
ドスッ、と重い音が地面に響き渡る。倒れたままの体勢で、再び殺人鬼は針を放ってきたのだ。
『ちっ、避けたか』
殺人鬼はのそりと起き上がると、そばに落ちていた斧を拾い上げた。その動作全てに、隙なんてものは見受けられなかった。
「ナギちん、今あたし自分にスカラかけたから、針ぐらいなら避けなくても大丈夫だよ」
「けど、万が一ってこともあるだろ」
ナギはそう短く応えると、シーラの手を離し、チェーンクロスを構えた。と同時に、殺人鬼が放つ殺気がさらに膨らんでいく。先手を取られればやられる。そう判断したナギは、すぐさま殺人鬼に向かって走り出した。
「俺たちも行くぞ」
「うん!」
ユウリもナギの後を追うように走りだしたので、私も彼らに援護する形で二人を追いかける。
「食らいやがれ!!」
斧を構えようとする殺人鬼に向かって、ナギは勢いよくチェーンクロスを振り回した。だが、素早く反応した殺人鬼は、地面を転がりながら間一髪避ける。
転がった先に回り込んだのはユウリだ。彼は殺人鬼の足めがけて、剣を振り下ろした。
『ちっ!』
ガキン!!
なんと殺人鬼は下半身だけを起こし、ユウリの剣を自分の両足で挟んで白羽取りをした。普通あんな無茶な体勢から剣を両足で取るなんてできることではない。そしてそのまま殺人鬼は、ユウリの剣を足で奪い取ると、明後日の方に飛ばした。
予想外の行動に判断が遅れたユウリは、剣の軌跡も目で追わず一歩後退した。
「何やってんだよ、ボケ勇者!!」
「ふん、奴の奇怪な行動に驚いただけだ」
その間に殺人鬼は体勢を立て直し立ち上がった。私が放ったわき腹の辺りを押さえているが、致命傷には至ってない。
「ヒャド!!」
その時、シーラの氷結呪文が殺人鬼の両足をからめとる。初歩の氷系呪文だが、殺人鬼の足もとから生まれた氷は、奴の足と地面を縫い付けた。
「ナイス、シーラ!!」
『くそっ、何だこれは!?』
どうやらこのタイプの攻撃を受けたのは初めてらしい。必死で足を動かすが、氷漬けにされた足はそう簡単には外れない。
??今だ!!
だが、私が正拳突きを叩きこもうと奴の間合いに踏み込んだ時、殺人鬼は強引に氷に覆われた足を引き抜いた。その際氷に張り付いた足の皮膚がはがれて緑
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