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俺様勇者と武闘家日記
第3部
ムオル〜バハラタ
殺人鬼の正体
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 過去に二回もカンダタと遭遇しているからか、彼かどうかの判別は大体わかる。今目の前にいるカンダタもどき……いや殺人鬼は、姿かたちは似ていても雰囲気や気配は人間のそれではない。隠すこともなく相手に向ける純粋な殺意。それは今まで遭遇した、たいていの魔物が備わっていたものだった。
『おとなしく、おれの餌食になればいいものを……。これだから人間は……』
 しかもこの魔物、人間の言葉を話せるようである。と言ってもエジンベアとジパングにもそう言う魔物と対峙してきたので、いくらか動揺は抑えられたが、それでもどの程度の強さなのかは未知数だ。
「人の言葉がわかるなら話は早い。お前はなぜ人を襲う? 喰うためか?」
 警戒しながら、ユウリが殺人鬼に向かって質問した。自分に声をかけてきた人間を見るのが珍しいのか、殺人鬼はわざとらしいほどの大げさなリアクションでユウリの方を振り返った。
『おまえ、おれを見ても怯えないのか? ……まあいい、なぜ人を襲うかだって? 決まってるだろ、楽しいからだ!!』
「……楽しい?」
 眉間にしわを寄せたユウリの眉が、ピクリと上がる。
『生き物の胴体を切り裂く感触、獲物を振りかざすときの恐怖におびえる表情、断末魔!! それらすべてがおれにとって快楽の一つなんだ!!』
「……っ!」
 殺人鬼の口上に吐き気を催し、私は思わず口を押える。シーラもかすかに肩を震わせながらも、殺人鬼をキッと見据えている。
『最初はその辺の魔物を斬り刻んでたんだが、最近近くに魔物が現れなくなったんでな、魔物よりも弱い人間を標的にしたんだ』
 自らの快楽のために同胞を手にかける魔物がいるなんて、にわかには信じられなかった。それどころか、人間まで襲うなんて――。
『けど、人間は日が出ていないと町の外にやってこない。おれは日の光が苦手だから、この時間しか人間を襲うチャンスはなくてイライラしてたところだったんだ。ちょうどお前たちのような間抜けな人間がやってきて、好都合だよ』
 そこまで言うと、殺人鬼は手にしている斧を構えなおし、ものすごい速さでこちらに向かって駆けだした。
『まずはそこの柔らかそうな肉のお前からだ!!』
 殺人鬼が標的にしたのは、なんと私だった。柔らかそうな肉というのがどういう意味かはあまり考えたくないが、私は殺人鬼を迎え撃つために星降る腕輪の力を解放した。
『!?』
 殺人鬼が斧を振りかぶった瞬間、私はそいつの視界から消えた。
 ドゴッ!!
 素早く横に回った私は、殺人鬼のわき腹を蹴り飛ばす。
 レベル24の武闘家の蹴りを侮るなかれ。殺人鬼は数メートル先まで吹っ飛ばされ、近くの木に当たって倒れる。
「やるじゃん、ミオ!!」
 ナギが口笛を吹きながら感嘆の声を上げる。だがその横でユウリがぴしゃりと言い放つ。
「まだ気を抜くな!
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