教授で子持ちのマスター
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なネズミが!」
「そんなのがこの日本にいるのか?」
「あの感触に間違いはねえっての!」
コウスケの訴えを無視しながら進んでいく一行。
そのまま数歩進んだところで。
「うおおおおっ!?」
「うわッ!」
今度はハルトにも、コウスケが騒ぎ出した原因が分かった。
暗闇の中から突如出現したコウモリの群れ。それが、ハルト、コウスケ、えりかの合間を縫って通路の奥へと移動していった。
「何だあれ……?」
「何で大学の施設内にコウモリが群生しているんだ……?」
しかも、地下であるこの階層の出入り口は、ハルトたちが乗って来たエレベーターと、どこかにあるであろう非常階段のみ。果たしてコウモリが、餌を取りに外に出て、この場所に毎日往復できるものなのだろうか。
だが、ハルトがそんな疑問を持っている間に、えりかが目的地に到着したようだ。その場にあるドアをノックすると、「どうぞ」と落ち着いた男性の声が聞こえてきた。
「蒼井、入ります」
彼女はそう言って、ドアを開けた。
彼女に続いて中に入ろうとすると、その隣でコウスケが「……オイオイ、マジかよ」と項垂れていた。
「どしたの?」
「ああ、よりにもよってだな」
コウスケは壁に手を当てて寄りかかる。
「まさか、この大学のマスターが、ウチの大学で一番の偏屈教授だったとは……」
「偏屈? 今から会う人、知っているの?」
「直接会ったことはねえよ。あくまで噂程度だから、話し半分で聞いてほしいんだが」
コウスケはそう言って、大きく息を吸い込んだ。
「聞いた話じゃ、奥さんにも逃げられるほど研究熱心らしいしぜ」
「ああ、本当にいるんだね。そういう人」
これまでの教授という言葉から連想していた通りの人物らしい。
これからの出会いに期待不安を抱きながら、ハルトは首を回す。
「……今更偏屈の一人や二人、変わらないって。参戦派でないなら、俺は構わないよ」
これまで出会ってきた参加者。そのほとんどが、どう接すればいいのか、はたまたかつて正解だったのかは分からない。
性格に問題の一つや二つあるくらいなら、まだかわいい物だと感じており、ハルトはえりかに続いて、ドアの隙間から顔を覗かせる。
「お邪魔しま……す」
えりかに続いて、部屋の中を覗いたハルトは、その有様に口をあんぐりと開けた。
さすがに部屋の中は、外とは違って廃墟のようにはなっていない。だがかび臭さは外とは変わらずに満ち足りており、人間ならばきっと不快感を露わにするのだろう。
電気は点灯されているものの、点滅を繰り返し、狭い部屋の全貌を掴むのは一目では難しい。だがやがて、その六畳ほどの部屋のほとんどが、大量の書類と実験器具で満ちていることが判別でき
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